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高臨場感映像・音響が創り出す新たなユーザ体験の評価技術
小特集 7.
高臨場感映像システムの評価
Evaluation of Presence for High-realistic Imaging Systems
abstract
4K・8K衛星放送は,既に試験放送が行われ,2018年12月には本放送が予定されている.これらの高臨場感映像システムの映像表現では,新たに創造される価値や効用,ユーザビリティ,ユーザエクスペリエンス等を考慮した適切な品質評価方法の構築が求められる.本稿では,これに関連して,高臨場感映像システムから感じられる臨場感の評価,映像酔い評価,動画質評価,動画質評価実験参加者を選別するためのスクリーニング,及び,視聴者行動の一つとしての好まれる視距離の検討事例を紹介する.
キーワード:8K,スーパーハイビジョン,4K,高臨場感映像,評価
TV放送システムは,標準TVから高精細TVへ,アナログTVからディジタルTVへ進歩してきた.2018年12月には更なる進歩を遂げた,4K・8K衛星放送の本放送が予定されている.8K放送はスーパーハイビジョンUltra High Definition TV(UHDTV)(1)~(3)とも呼ばれ,これまでにない新たなユーザ体験を提供する将来の高臨場感映像システムとして,研究・開発が行われてきた.このような放送システムの映像表現では,新たに創造される価値や効用,ユーザビリティ,ユーザエクスペリエンス等を考慮した適切な品質評価方法の構築が求められる.我々はその一環として,高臨場感映像システムから感じられる臨場感の評価,広視野化により懸念される映像酔いの評価,被写体速度上昇が予想され,重要度を増すと考えられる動画質の評価,動画質評価実験参加者を選別するためのスクリーニング,及び,変容する可能性のある視聴者行動の一つとして,好まれる視距離についての検討を行ったので紹介する.
UHDTVの水平視角は自覚的視性垂直位Subjective Visual Vertical(SVV)(用語)の映像による誘導傾斜効果が,視角約100度で飽和することから提案された(4).この飽和現象から,視角約100度の映像システムが,観視者に最大限の臨場感を提供可能と解釈できる.観視者は十分な映像品質を持つ広視角映像から,これまでにない新たなユーザ体験である,高い臨場感を得ることができると考えられている.我々は,UHDTVが,提案当初想定された臨場感を提供可能であることを確認するため,UHDTVの臨場感主観評価を行った.従来,臨場感主観評価の問題点として,評定者の経験による再現性(5)の問題や,臨場感の語が持つ曖昧さに起因する個人差(6)が指摘されている.このため,評価語として臨場感を使うことが避けられる傾向にあり,様々なアンケート(7),(8)が開発されたり,力量感を評価語とした評価が行われている(9).我々は,視角を変化させたUHDTV静止画像観視時の2回の臨場感主観評価を行い,視角に対する臨場感の定量化を試みると同時に,評価の再現性を検討した.結果を図1に示す.これにより,観視画像の視角が広いほど臨場感が感じられ,最大観視視角100度付近でやや飽和傾向であること,臨場感を評価語とする主観評価実験の再現性には問題がないことを確認した(10).更に,主観評価実験の実験計画について検討した.実験参加者全員が全視角の画像を観視する実験参加者内計画の場合,対比効果によって視角の効果が強調される可能性があることを示した.一方,実験参加者が一通りの視角の画像のみを観視する実験参加者間計画では,対比効果は避けられるが,必要人数は増加し,極端な評定値を避けるスケーリング効果が生じることを示した(11).
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