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知的財産のシステムの目的は,それ自体美しいシステムであることではなく,イノベーションの実現を円滑化することにある.一方,21世紀に入ってイノベーションは大きく変質し,供給サイドよりも需要サイドがイノベーションをリードするようになった.この不可逆的な変化の下では,将来の需要の大きな流れを見据えて必要なイノベーションを生み出すことを目指し,そのための知的財産の戦略を立てる必要がある.将来の需要の流れを決定付けるのは,「どんな社会であるか」であるため,未来の社会を考え,そこからバックキャストする形で,イノベーションが持続的に起きることを支える知的財産の仕組みを考えなければならない.こうした問題意識から,2017年12月に知的財産戦略本部の下に専門調査会(図1)を作って集中的に議論を重ね,2018年6月に「知的財産戦略ビジョン」(注1)を取りまとめた.
組織代表の人たちがロの字形に座って,一人数分の意見を言い,事務局がまとめて返答するといった通常の役所の審議会は,未来社会を議論するには不向きである.このため,今回の専門調査会では,未来社会を語るにふさわしい少数精鋭のメンバーを選び,役所の審議会としては異例なグループ討議を導入し,更にグループでの考えを全体に発表して全体でも議論を深めた(図2).
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