特別小特集 3-2 iPS細胞技術の特許ライセンス

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特別小特集 3-2 iPS細胞技術の特許ライセンス

工藤周三 iPSアカデミアジャパン株式会社

Shuzo KUDO, Nonmember (iPS Academia Japan, Inc., Kyoto-shi, 606-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.1 pp.34-37 2019年1月

©電子情報通信学会2019

1.は じ め に

 “iPSアカデミアジャパン株式会社”は,iPS細胞技術に特化した技術移転機関として,京都大学により2008年6月に設立された.その後,2016年1月に広域型承認TLO(Technology Licensing Organization)となり,「iPS細胞に関する研究成果を,迅速に,着実に人類のために社会に還元することにより,人類の健康と福祉に貢献する」というミッションを掲げ,京都大学以外の大学や研究機関にも開かれた協調的技術移転機関としてライセンス活動を行っている.

2.iPS細胞とその産業応用

 京都大学の山中伸弥教授らが2006年に発明したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は,無限に自己増殖が可能で,どんな細胞(例えば,神経細胞や心筋細胞)へも変化可能である.このiPS細胞は,学問上の重要性のみならず,産業上の重要性,特に新薬開発分野と再生医療分野での応用が発明当時から期待されている.実際に,これまでの10年以上の研究の積み重ねにより,その期待が着実に現実のものとなってきている.

 このような人類の健康と福祉に貢献可能なiPS細胞技術の知財に関する京都大学の基本方針は,「囲い込むためではなく,広く産業化を促進するために知的財産を確保する」というものである.これは,iPS細胞研究の成果を新薬開発分野であれ再生医療分野であれ,産業化という形で一刻も早く社会へ還元するためには,国内外の多数の研究機関や企業が協調と競争を繰り返しながら多岐にわたる研究成果を生み出す必要がある,との考えに基づいている.もし特定の企業がiPS細胞技術に関する重要特許を独占保有してしまうと,他企業や研究機関に対してライセンスを拒絶したり,ライセンス拒絶に等しい高額なロイヤリティの支払い等を求めたりする事態が生じかねず,そうなると結果としてiPS細胞に関する特許発明が広く利活用されず,技術の進歩や産業の促進が阻害される可能性もある.


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