特別小特集 3-3 社会共生型特許活用

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特別小特集 3-3 社会共生型特許活用

広瀬勇一 富士通株式会社法務・コンプライアンス・知的財産本部

Yuichi HIROSE, Nonmember (Legal, Compliance & IP Unit, Fujitsu Limited, Tokyo, 144-8588 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.1 pp.38-40 2019年1月

©電子情報通信学会2019

1.は じ め に

 特許権を中心とするいわゆる「知財」は新たな事業の創出やその展開において核となるものであり,社会をデザインしていくことができる大きな効力や可能性を持つ.Society5.0が提唱する超スマート社会に向けては,「知財」の側面からも,保有する良質な技術を広く社会に展開していくことにより,その形成を後押しすることができるものと確信している.

 開放特許の活用を通じて,社会との共生を目指す富士通の取組みと製品開発事例等を紹介する.

2.開放特許活用

2.1 特許活用の現状

 日本国内における研究開発投資は年間18兆円規模に及びその70%は企業によるものと言われている.また,日本特許庁には160万件超の特許権が登録されており,世界でも有数の特許大国として知られる.企業は研究開発投資の成果として結実した技術の多くを特許権やノウハウ等として保有している.

 一方,特許庁の統計によれば,登録されている特許権のうち活用されているものは約半数にとどまり,活用されていない特許権が時を経ても一定割合で存在している.将来に向かって価値を増していく特許権が現時点では未活用特許に分類されているとも推察できるが,当初期待していた大きな規模にまでマーケットが成熟せず事業化が見送られた特許権がその多くを占めているとの分析もなされている.もはや保有する理由を欠くに至ったのであれば放棄処分も選択し得るところ,それらが保有されているのは少なくとも技術の本質的価値がいまだ減少していないということであろう.


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