特別小特集 5. ディジタル信号処理技術が開く超100Gbit/s短距離光通信システム

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Vol.102 No.10 (2019/10) 目次へ

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特別小特集 5. ディジタル信号処理技術が開く超100Gbit/s短距離光通信システム

佐々木愼也 正員:シニア会員 公立千歳科学技術大学理工学部電子光工学科

Shinya SASAKI, Senior Member (Faculty of Science and Technology, Chitose Institute of Science and Technology, Chitose-shi, 066-8655 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.10 pp.947-951 2019年10月

©電子情報通信学会2019

1.は じ め に

 検索サービス,SNSサービス,音楽・動画像配信サービス,ホームページブラウジングなど,現在我々が享受しているインターネットサービスは,ほとんど全てクラウドネットワークによって提供されている.クラウドネットワークの構成を簡単に表すと,通信キャリヤが運営するユーザとデータセンターをつなぐネットワークと,データセンターを所有する企業が運営するデータセンター内ネットワークの二つに分けることができる.

 データセンター内ネットワークは,データセンター内の多数のサーバやストレージとスイッチを結ぶネットワークであり,その特徴は,①通信距離が数百mから2km程度と短距離通信であること,②データセンターという限られた空間の中で大量の光送受信機と光ファイバを高い実装密度で使用すること,などが挙げられる.また,データセンターネットワーク全体に流れるトラヒック量は,ユーザとデータセンターをつなぐネットワークのそれの10倍近い量であり,この傾向は今後も続くと予想される(1).そのため,最近の光通信の研究テーマは,データセンター内ネットワークに関するものが中心を占めている.

 上記のデータセンター内ネットワークの特徴を満たすためには,経済性が高く小形・低消費電力で大容量通信を実現できる光送受信機が必要であり,そのため現在のデータセンター内ネットワークで採用されている光変復調方式は,強度変調―直接検波方式である.今後データセンター内ネットワークで使用が期待されている400Gイーサネットの通信規格は,光ファイバを使った通信方式として4方式が採択されている(2)が,4方式とも全て強度変調―直接検波方式である.

 データセンターネットワークの更なる大容量化を経済的に実現するためには,波長が異なる複数の光を用いた波長多重技術や多芯のリボンファイバを用いた空間多重技術の使用を最小限に抑えながら,大容量な強度変調―直接検波方式を研究開発しなければならない.更に経済性を追求すると,高速で動作する光デバイスや電子回路の使用を避け,極力低速度で動作する送受信機で大容量通信を実現する手段が必要である.本稿では,この研究の流れに沿った方式の一つで筆者らが提案しているCAP(Carrierless Amplitude and Phase)変調-CDM(Code Division Multiplex,符号分割多重)方式を紹介する.

2.CAP変調-CDM方式

 本章では,筆者らが提案しているCAP変調-CDM方式の原理を簡単に説明する.


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