特別小特集 6. ナノ粒子の光マニピュレーション

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特別小特集 6. ナノ粒子の光マニピュレーション

笹木敬司 北海道大学電子科学研究所光科学研究部門

Keiji SASAKI, Nonmember (Research Institute for Electronic Science, Hokkaido University, Sapporo-shi, 001-0020 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.10 pp.952-956 2019年10月

©電子情報通信学会2019

1.は じ め に

 光を物質に照射したとき,反射・屈折・散乱・吸収の過程で光の運動量が変化することにより物質に力(光圧)が作用する.この光圧を利用してマイクロ粒子を非接触に捕捉する光ピンセット技術を開発したArthur Ashkin博士に2018年のノーベル物理学賞が授与された.集光レーザを用いた光ピンセット技術は,1986年の発表以降(1),細胞・ウイルス・DNA・たん白分子などのバイオ光操作,マイクロ化学チップの輸送制御への応用等,様々な分野に展開している.我々も,1990年代前半に,高分子鎖,ミセル,液晶,金属微粒子など,µm~数十nmの分子集合体・コロイド粒子の光トラッピングを実現するとともに,集光レーザビームを高速で走査する動的光マニピュレーション技術を開発し,マイクロ粒子のパターニング・フロー制御,微小構造体のアセンブリング・マイクロマシーニング等,自在に粒子を空間配列してダイナミックに制御し駆動する研究を展開してきた(2)(4).近年,ナノサイエンス・ナノテクノロジーの研究が進展する中で,様々なナノ粒子や分子系等更に小さい物質のマニピュレーションへの展開が期待されている.光圧でナノ物質を,その一つ一つの性質ごとに個別・選択的に運動操作(捕捉・輸送・配置・配向)できれば,ナノ物質の運動に秩序を出現させ,高度な構造や機能を発現させる,新しい物質科学への展開が期待できる.しかしながら,粒子サイズが小さくなると粒径の3乗に比例して光圧が減少するとともに,熱運動や種々の分子間力・電気二重層力・粘性抵抗などの物理・化学的相互作用力が複雑に作用するため,数十nmより微小な粒子を捕捉・操作することは困難とされてきた.また,回折限界によって,光をレンズで数百nmより小さなスポットに絞り込むことはできず,ナノスケールの粒子パターニングやナノ空間輸送制御は集光レーザでは実現できない.このように,光マニピュレーションにおけるマイクロからナノへの展開には大きな壁が立ちはだかっていた.

 本稿では,高強度のエバネセント場を形成する光ナノファイバに対向レーザビームを導入するシステムを用いてダイヤモンドナノ粒子一個一個の吸収特性による光選別輸送を実現する研究について紹介する.また,プラズモニック技術を駆使してシングルナノメートル空間における光電界の振幅・位相・偏光を制御し,ナノ粒子をナノスケールで自在に操る新規な手法について解説する.

2.光ナノファイバを用いたナノ粒子の光選別輸送


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