巻頭言 北の国から思うこと

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Vol.102 No.10 (2019/10) 目次へ

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巻頭言

北の国から思うこと Thinking in North Island of Japan北海道支部長 柏 達也

 北海道支部長ということで北海道に住んでいて思うことを書いてみようと思います.筆者は北見市という地方都市の大学に奉職しております.日本最北端に在る国立大学法人です.なぜか,オホーツク地方というロシア語で呼ばれております.札幌から300km離れており,東京―名古屋間ぐらいの距離です.ちなみに新幹線は走っておりません.北海道はとにかく広いです.北見といっても知らない人も多いかと思いますが,カーリングで“そだねー”で一躍有名になった所です.

 マスコミは主に一極集中の東京中心の立場で報道し,地方中核都市はその立場で情報を発信します.しかし,地方都市に住む身としては多少実感が違うように思います.また,地方評論家の方も東京に在住している方が多いように思います.特に,地方は物価が安いなどとよく言われますが,都会よりも高く感じることも多いです.

 地方都市は課題先進国日本の中でも特にその先端を歩んでおり,急激な人口減少も含め経済的に非常に厳しい所が多いです.しかしながら,その解決には正に電子情報通信技術が大きく貢献できる面があるように思います.時流の言葉になりますが,5G通信,人工知能,GNSSによる高精度位置推定などが重要な技術になるでしょう.北海道の中核産業は農林,水産,食品,観光であり,今後更に必要となるのは遠隔医療と思われます.広大な土地においてはこれらの技術でコストの削減や新製品の開発,利便性を大きく高めることができる可能性があります.日本は既に物づくりという小さな概念ではなく,事づくりあるいはサービス開発という時代,別な言い方をすると量から質の時代へ移ってきていることは皆様御存じのとおりです.

 近年想定外の災害等が起こっておりますが,この記事が書かれている時代のことを記しておくと北海道でも昨年日本で史上初めてのブラックアウトが起きました.誰も,予想していなかったことが実際に発生しました.災害の存在とそれに対処する技術や社会システムの重要性が改めて認識されました.明るいニュースとしては大樹町からIST社により日本で初の民間のロケットが打ち上がりました.このことは北海道に一つの大きな可能性と希望を与えてくれました.何事もチャレンジ精神,失敗を恐れない覚悟がいかに重要であるかを示してくれました.

 現在の日本にはどちらかというと悲観論が多いようにも見えますが,ピリング著の「日本―喪失と再起の物語」に書かれているように歴史的に見ればこの国の人々はどんな危機にあっても必ず力強く復興するように思います.衰退激しく見える北海道ですが,このかつて“試される大地”と言われた大地にこそ大きな可能性が秘められているように思います.

 最後になりますが,筆者も長年にわたり本会において様々な形でお世話になってきました.そのことを通して自分という人間が大きく成長したと思います.今後は,その感謝の念を込めて,特に地方在住者の目も通して本会の発展に微力ではありますが貢献していきたいと思います.


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