特別小特集 北で輝く光科学技術の研究 編集にあたって

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Vol.102 No.10 (2019/10) 目次へ

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特別小特集 北で輝く光科学技術の研究

編集にあたって

特別小特集編集委員会委員長 荒木健治

 機械学習の一つの技術であるディープラーニングによる飛躍的な精度の向上に端を発する第三次人工知能ブームの興隆はとどまるところを知らず,急激な勢いで社会に浸透していっている.やがては,自動車や電話などのような社会のインフラの一つとなり,特別な注目を引くことなく当たり前に存在するものになっていくものと考えられる.

 人工知能が社会インフラの一つとなる際に必須のものが,光を用いた通信などの技術である.現在の人工知能の興隆はビッグデータが利用できることが必須となっているが,このビッグデータはインターネットから得られることが多いためである.特に,北海道は日本で最も広い地域であり,遠隔地に住んでいる人の割合が多く地域格差を解消するために光による通信技術の性能向上は欠かせないものとなっている.このことが北海道で光に関する研究が盛んになった一因となっている.

 今回,北海道支部で本特別小特集を企画するにあたり,北海道で盛んなものは何かと考えた際に注目したのが光科学技術であったのは,需要が多かったことが背景にあり,研究者が多く集まってきたものと考えられる.このため本特別小特集の題名を「北で輝く光科学技術の研究」とした.「輝く」は「光が輝く」と「研究者が活発に活動している」の両方の意味を掛けている.

 本特別小特集では,北海道の研究者が行っている光に関する研究として,材料,デバイス,通信,計測の順に解説して頂いた.まず,光に関する材料としては,2編の解説を掲載している.1編目は,塩谷浩之(室蘭工大),郷原一寿(北大)に「回折イメージングの情報数理」と題して,情報科学と物質科学の接点の一つとして,回折イメージングにおける情報数理を基盤とした位相回復アルゴリズムとその一般化について解説して頂いた.2編目は,酒井大輔(北見工大)による「透明媒質表面の微細構造と光反射」と題して,近年著者が研究している汎用ガラスへの微細構造形成法について解説して頂いた.更に,自然界で海中に生息する透明な生物の中で,その体表面にあるナノ構造を利用した光反射防止効果への応用についても紹介して頂いた.

 次に光に関するデバイスとしては,村山明宏(北大)に「半導体量子ドット結晶が実現する新しい光機能性」と題して,サイズや量子効果が設計可能な量子ドットの新しい作製プロセスや,量子ドットにおける電子スピンダイナミクスとスピン情報の光電情報変換への応用を目指した研究を紹介して頂いた.

 次に光を用いた通信に関しては2編の解説を掲載している.1編目は,富田章久(北大)に「量子暗号通信の最前線」と題して,量子暗号を用いた通信技術の遠隔治療や医療データのバックアップへの応用が期待されており,北海道のように中核となる医療機関への距離が長い地域で医療の質を確保するために重要な役割を果たすということについて解説して頂いた.2編目は,佐々木愼也(千歳科技大)に「ディジタル信号処理技術が開く超100Gbit/s短距離光通信システム」と題して,大容量光通信システムに関して10GHzの帯域を持つ光・電子デバイスを用いて,超100Gbit/s短距離光通信システムを実現する変復調技術について解説して頂いた.

 次に,光を用いた計測に関しては,笹木敬司(北大)に「ナノ粒子の光マニピュレーション」と題して,プラズモニック技術を駆使してシングルナノメートル空間における光電界の振幅・位相・偏光を制御し,ナノ粒子を自在に操る技術,及び光ナノファイバを用いてダイヤモンドナノ粒子を選択輸送する技術について解説して頂いた.

 末尾となりましたが,本特別小特集(北海道支部)の原稿を執筆して頂いた執筆者の皆様,編集委員会の皆様,学会事務局の皆様に深く御礼申し上げます.

2019年10月号特別小特集編集委員会

委員長 荒木健治(北大)    幹 事 坂本雄児(北大)    委 員 柏 達也(北見工大)  委 員 齊藤晋聖(北大)    委 員 塩谷浩之(室蘭工大)  委 員 吉本直人(千歳科技大)


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