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回路とシステムの研究を「社会実装」するまで
小特集 7.
徹底的な分解と再構築から見えてくるもの
What We Found on Complete Break Down and Reconstruction of Hardware?
abstract
コンピュータサイエンスの研究者であるAndrew “bunnie” Huang氏は,最初期のIoT製品であるChumbyを中国で量産するなど,研究を「世に出す」経験を多数試みている.その根底にあるのは,徹底的な分解と,その上での再構築のプロセスであり,また,設計・製造からマーケティング・財務まで,専門性の壁に阻まれがちな複数の分野を手を動かして作ることで解き明かしていく姿勢はまさに「社会実装」であり,様々な視点からの示唆に富む.本稿では,氏の著書「ハードウェアハッカー」の解説を通して,研究の社会実装について考察する.
キーワード:ハードウェア,量産,中国
コンピュータが進化して今日では欠かせない社会基盤となったが,これはムーアの法則に沿った半導体集積回路の進化と表裏一体であり,また高度化・複雑化の歴史を経てきた.そしてそれは,一方でコンピュータのブラックボックス化と,ソフトウェア・ハードウェアの分業化・分断化,そして産業としての高度な専門深化の歴史でもある.
マサチューセッツ工科大(MIT)で博士号を取得した,コンピュータサイエンスの研究者であるAndrew “bunnie” Huang氏(以下,bunnieと表記する)は,最初期のIoT製品と言えるChumbyを中国で量産するなど,研究を「世に出す」経験を多数試みている.その根底にあるのは,徹底的な分解と,その上での再構築のプロセスであり,また,設計・製造からマーケティング・財務まで,専門性の壁に阻まれがちな複数の分野を手を動かして作ることで解き明かしていく姿勢はまさに「社会実装」であり,様々な視点からの示唆に富む.本稿では,氏の著書「ハードウェアハッカー」(技術評論社,2018)の解説を通して,現代における研究の社会実装の在り方について考察する.
ハードウェアの中身を理解して(本来とは違うかもしれない)使い方をする「ハードウェアハッキング」の第一人者であるbunnieが,自分の体験をまとめた著書「ハードウェアハッカー」(1)(以下,本書と呼ぶ)には,米NSAの国際的監視網を告発したことで知られるエドワード・スノーデン氏,米MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏,Adafruitsのリモア・フリード氏など,研究者,実業家,ハッカーなど,様々な領域の著名人たちから賞賛が寄せられている.実際に彼のハッキングは,ハードウェア・ソフトウェア技術のみならず,法制度,ファイナンス,バイオテクノロジーなど,ハッキングが可能なあらゆるものに及ぶ.
bunnieの名を有名にした最初の出来事は,彼がMITで電子工学を学んでいる間に行った,マイクロソフトのゲーム機Xboxのハードウェアハッキングであった.彼は大学の研究予算で,ハードウェアのハッキングの可能性を探究する過程でプロジェクトを行ったことをこう書いている.
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