解説 ネットワークサービス開発に迅速で柔軟な実行環境を提供するプログラミング言語P4の最新動向

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解説

ネットワークサービス開発に迅速で柔軟な実行環境を提供するプログラミング言語P4の最新動向

The Trend of P4 Language Which Enable Quickly and Flexible Network Service Development

武井勇樹

武井勇樹 正員 日本電信電話株式会社NTTネットワークサービスシステム研究所

Yuki TAKEI, Member (NTT Network Service Systems Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Musashino-shi, 180-8585 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.11 pp.1045-1049 2019年11月

©電子情報通信学会2019

abstract

 近年,ネットワークやクラウド技術を利用したサービスが急速に発展し,「サービス開発に向けた迅速で柔軟な実行環境の提供」という要求が大きくなっている.従来のハードウェアでは実現が難しかった開発要求をソフトウェアで実現するために,プロトコル・デバイスに依存しないパケット処理を定義するプログラミング言語であるP4の議論が活発化している.本稿では,P4言語の概要とその動向,P4技術を活用して構築されるONFのオープンソースプロジェクトであるStratumのコミュニティ動向について解説・紹介する.

キーワード:P4, Stratum,ホワイトボックススイッチ

1.は じ め に

 IoTやコネクテッドカーに代表されるように,近年,ネットワークやクラウド技術を活用した多様なサービスが急速に発展している.更にビジネススピードの加速も顕著であり,顧客ニーズにいかに早く対応できるかがサービス提供の差異化要件の一つとなっている.このような背景から,サービス提供に向け,多様化する要件への柔軟性と迅速性を持つ開発環境が求められている.

 迅速かつ柔軟にネットワークサービスを構築・運用するためにSDN(Software Defined Network)技術の適用が活発化している.SDNはネットワークをソフトウェアで自在に制御する技術である.従来のネットワーク機能は,ネットワーク機器ベンダによって開発されるため,ユーザが任意に変更することができなかったが,SDN技術によって一部カスタマイズができるようになってきた.SDNの実現技術としてOpenflow(1)やホワイトボックススイッチ等のオープンな技術が挙げられる.

 SDNの次世代を担う技術としてP4(Programming Protocol independent Packet Processors)(2)と呼ばれるオープンなプログラミング言語がある.既存SDNでは実現が難しかったデバイスレベルでの柔軟性を実現する手段として注目を集めている.本稿では,P4言語の概要並びに最新のコミュニティ動向について紹介する.

2.P4が求められる背景

2.1 従来の開発手法の課題

 従来のSDNのプログラム可能な範囲は,ネットワーク機器の制御系処理機能(コントロールプレーン)に限定されていた.パケット転送機能(データプレーン)に用いられる専用プロセッサASIC(Application Specific Integrated Circuit)は高速処理が可能であるが,あらかじめハードウェアとして組み込まれているため機能変更することはできない.新しい機能やプロトコルに対応するためには,標準仕様が策定され,機器ベンダが開発・リリースされるまで数年単位の時間を要す.

 このような課題に対して,ソフトウェア処理で機能を変更できるプログラマブルデバイスが多く登場し,着目されている.代表的なものとして,FPGA(Field Prog-rammable Gate Array),NPU(Network Processing Unit),Programmable ASICが挙げられる.これらのデバイスはプログラムを変更することによって,任意のタイミングで機能の追加・変更することができる.


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