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Vol.102 No.12 (2019/12) 目次へ

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巻頭言

もっと大きなコミュニティへ To Expand the Community編集理事 石原智宏

 昨年6月から編集理事を務めており,会誌などを担当しています.本会の運営に20年以上関わっていますが,最近は,これまでのやり方を変える,新しい取組みを導入するなど,運営の改革について毎年のように検討しています.それだけ,学会を取り巻く環境が大きく変化してきたということかと思います.

 そのような中で,20年前とは明らかに違うこと,最近の気になることを二つ取り上げてみます.

 まずは,ICTが私たちの社会や生活に広くあまねく行き渡ったことが大変化だと思います.PCからスマートフォンまで,今では一人で数台のコンピュータを所有し,それらを持ち歩いているのが当たり前になりました.そして,それらのコンピュータはネットワークにつながるのが当然になりました.それまでは,そういう状況を実現するための技術が注目されていましたが,今は,ここまで進歩したICTを使って我々の社会や生活をどう変えていくのかに注目が集まっています.ビジネス用語としては「ディジタル革新」とか「ディジタルトランスフォーメーション」などと呼ばれているものです.例えばAIは,配送ルートの効率化,各種医療検査での異常発見,車の自動運転を例として,世の中のあらゆる分野での効率化,省力化,自動化を実現することが期待されています.IoTも同様に,工場,オフィス,店舗,街に適用して,効率化,省力化及び安全性向上が期待されています.これらに共通して重要なことは,ICT以外の分野との関わりです.ここでの例では,運送業,医療,自動車,各種製造業,小売業,都市計画などの専門家と共同で技術開発を進めることが必要であるということです.本会は,元々はICTの研究をする人の集まりですが,これからは,ICT以外の業種の人ともコミュニケーションできる場になっていくとよいと思います.既にイベント的に,IoTやAIなどのシンポジウム/ワークショップが異業種の方を交えて行われています.それらが,更に盛んになり定着し,異業種の方も本会のコミュニティのメンバーとなって頂ければ,本会が活性化していくように思います.

 二つ目は,学会とは別の技術コミュニティがいろいろできてきたということです.そもそも本会は,電子情報通信を研究する人々が,研究発表などを通じてお互いの技術知識を共有するコミュニティだと思います.一方ソフトウェアの世界では,オープンソースソフトウェア(OSS)が大きく発展して,関心が高い人は,その開発に参加することで,知識の発信と共有をしています.それがOSSのコミュニティです.また,OSSの使い方に関する情報はインターネット上にあふれており,読む人も投稿する人も多数います.それらは,OSSを取り巻くコミュニティだと思います.また別のものとして,最近は「技術書」というジャンルでの同人誌を作ることが流行していて,展示即売会では多くの人が集まるようです.技術書の中身はいろいろありますが,OSSの使い方や,OSSを組み合わせたシステムの構築方法の解説などが多いようです.それも技術知識を共有するコミュニティだと思います.このような新しい技術コミュニティが生まれてきていますが,残念ながらそれらと学会との関係は薄いように思われます.これらのコミュニティが生まれるということは技術知識を共有したいという人が多数いるということなので,本会もこれらと連携して技術知識の共有ができるようになればよいと感じています.

 最近感じたことを,思いつくままに書いてみました.更にもっと学会を変えていかなければと思いながら,学会運営にあたっている今日この頃です.


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