電子情報通信学会 - IEICE会誌 試し読みサイト
© Copyright IEICE. All rights reserved.
|
創造性・芸術性におけるAIの可能性
小特集 3.
AI作曲で脳を活性化
Emotion-driven Music Composition
abstract
音楽創作の目的は聴き手に感動を引き起こすことにある.この考え方に基づき,聴き手の反応を見ながら創作を行う人工知能について述べる.この方法では,聴き手の反応,すなわち,感情の測定結果に基づき,今作りつつある新たな曲に対する聴き手の反応を予測する.それをベースにした自動作曲について論じ,AI作曲による人(脳)の活性化へとアプローチする.
キーワード:自動作曲,感性情報処理,機械学習,遺伝的アルゴリズム
人工知能のフロンティアと考えられるのは,小説や音楽などの創造行為,及び人のおもてなしの技術である.人工知能による小説の著作やGoogleによる自動作曲が話題になっているが,創作の種は人が仕込んできた.本稿では,人をもてなすという観点で,人工知能の柔軟性と自律性を上げることを考える.すなわち,人の感情を検出することにより,人が人工知能に与える創作の種を減らしていく手法を論じることにする.
創作の目的は受容者(音楽の場合,聴き手)に感動を引き起こすことにある.この考え方に基づき,聴き手の反応を見ながら創作を行う.聴き手の反応,すなわち,感情を測定するのである.更に,いちいち聴き手にお伺いを立てずに済むように,今作りつつある新たな曲に対する聴き手の反応を予測する.
これらを行うため,音楽を対象とした感情の測定技術と予測技術,それらをベースにした自動作曲について論じる.我々は,音楽を聴くことで,元気で快適な状態になろうとする.そのための選曲を自動化しようとするのが,音楽推薦システムである.更に,目標とする気分になるように,その場で自動作曲を行うことを目指すわけである.
既存の楽曲を学習することにより,新たな曲を作る手法として,例えば,モーツァルトの曲からモーツァルト風の曲を自動作曲することが考えられる.人工知能における機械学習の分野では,楽曲の構造を学習する手法がある(1).筆者も既存の曲の和音進行を学習することにより,別の曲を編曲するシステムを開発したことがある.これらのシステムは,楽曲から機械学習を行うが,その曲の聴き手が何を感じたかは全く考慮していない.聴き手の反応を無視しているのである.
音楽には,作曲家が楽譜を書き,演奏家が演奏して,聴き手が聴くという,作曲家から聴き手への図1に示すような「情報の流れ」(2)がある.楽譜や演奏情報(コンピュータ演奏ならMIDIデータ)は,その流れの一断面を表示するものである.したがって,楽譜の断面やMIDIデータの断面を通過する情報を調べれば,楽譜や演奏の各部分が喚起する感性を知ることができる(3).人間の感性は,非常に複雑なものであり,各個人に依存するし,時代背景を含む状況にも影響を受けやすい.したがって,「感性は何か」ということを追究するのではなく,「感性に影響を与えるような音楽構造は何か」を調べることにより,個人の聴き手,若しくは聴衆の感性に合わせた作曲を行うことを試みるわけである.以上のような考え方に基づき構築したシステムについて述べる(3)~(6).
続きを読みたい方は、以下のリンクより電子情報通信学会の学会誌の購読もしくは学会に入会登録することで読めるようになります。 また、会員になると豊富な豪華特典が付いてきます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌はモバイルでお読みいただけます。
電子情報通信学会 - IEICE会誌アプリをダウンロード