小特集 6. 人工知能による文学創作

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創造性・芸術性におけるAIの可能性

小特集 6.

人工知能による文学創作

Literature Creation by Artificial Intelligence

松原 仁 川村秀憲

松原 仁 公立はこだて未来大学

川村秀憲 正員 北海道大学大学院情報科学研究科情報理工学専攻

Hitoshi MATSUBARA, Nonmember (Future University Hakodate, Hakodate-shi 041-8655 Japan) and Hidenori KAWAMURA, Member (Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, Sapporo-shi, 060-0814 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.3 pp.240-246 2019年3月

©電子情報通信学会2019

abstract

 コンピュータに創造性を持たせようという試みの一環としてコンピュータに文学作品を創作させる研究が行われている.本稿ではコンピュータに文学を創作させる試みとして小説(ショートショート)と俳句の例を取り上げる.小説の部分は松原が,俳句の部分は川村が執筆している.散文の代表としての小説,韻文の代表としての俳句であり,方法論も(機械学習を使っていない)従来の人工知能の技術による小説創作とディープラーニングの技術による俳句創作であり,比較対象として適当と考える.

キーワード:小説,ショートショート,俳句,ディープラーニング

1.は じ め に

 コンピュータに創造性を持たせようという試みの一環としてコンピュータに文学作品を創作させる研究が行われている.本稿ではコンピュータに文学を創作させる試みとして小説(ショートショート)と俳句の例を取り上げる.小説の部分は松原が,俳句の部分は川村が執筆している.散文の代表としての小説,韻文の代表としての俳句であり,方法論も(機械学習を使っていない)従来の人工知能の技術による小説創作とディープラーニングの技術による俳句創作であり,比較対象として適当と考える.なお,小説の方は6年前に研究を開始してこれまで本を含めて出版物を多く出しているので簡単に述べ,まだ始めたばかりで出版物が少ない俳句の方を詳しく説明する.

2.AI と 小 説

2.1 「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」

 2012年にショートショート(厳密な定義はないが,おおむね8,000字以内の小説)をコンピュータに創作させることを目標とするプロジェクトを開始した.参考にすべき作家として星 新一を選び,彼のような作品を作ることを目指す.プロジェクトの名称は「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」としたが,星 新一の代表作である「きまぐれロボット」と「殺し屋ですのよ」にちなんだものである.星 新一を選んだ理由は,

 (1)1,000作以上の高水準のショートショートを書いていてデータが多いこと.

 (2)いわゆる落ちがある作品で物語の構造が明確であること.

 (3)星 新一自身が自分の創作方法について多くのコメントをしていること(例えば文献(1)).

 (4)著作権継承者から作品の電子ファイルの提供を含めて協力が得られること.

 (5)星 新一の作品の物語構造に関する研究(例えば文献(2))が存在してその結果が利用できること.

 (6)多くのファンや評論家が存在して作品の特徴に関する知見が得られると期待されること.

などによる.星 新一は過去の作品を検討して今までにないパターンを検索することに創作のヒントがあると書いている(1).そうであればコンピュータはランダムの探索が得意なので新しいパターンを見つける可能性があるのではないかと考える.(人間はランダム探索が苦手で一定の傾向が出やすい.)長編の小説の創作は今のコンピュータにとっては非常に難しいと思われる.(単文であればコンピュータもそれなりのものが作れるがそれを一貫して長く続けることが困難である.徐々にずれが広がっていって同じ著者が書いている感じが失われてしまう.)ショートショートは新しいアイデアが勝負であり,それであれば今のコンピュータにも挑戦できる可能性があると考えた.


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