小特集 8. 人工知能生成コンテンツは著作権で保護されるか

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創造性・芸術性におけるAIの可能性

小特集 8.

人工知能生成コンテンツは著作権で保護されるか

Does Copyright Protect AI-generated Content?

奥邨弘司

奥邨弘司 慶應義塾大学大学院法務研究科

Koji OKUMURA, Nonmember (Keio University Law School, Tokyo, 108-8345 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.3 pp.253-258 2019年3月


本記事の著作権は著者に帰属します.

abstract

 現行著作権法と伝統的な著作権法学の考え方に基づけば,人工知能が生成するコンテンツは,人間が著作者であって人工知能を道具としてコンテンツを創作したと言える場合,著作物となり,著作権で保護される.しかしながら,そうではなくて,人工知能が「作者」と考えられる場合は,著作物とはならない.人間が著作者となるか否かは,表現に関して,人間が創作的に寄与しているか否かで判断される.

キーワード:人工知能,コンテンツ,著作権,著作物

1.は じ め に

 本稿では,人工知能が生成したコンテンツが,著作権で保護されるか否かについて,現行著作権法に照らして考えてみたい.なお,筆者は,同様のテーマについて,既に論文(注1)を公刊しており,本稿は前記論文に基づくものである(注2).ただし,本小特集において本稿に期待される役割に鑑み,本稿では,私見は控え,伝統的な著作権法学の考え方(注3)を中心に紹介することとしたい.

 全体の流れとしては,まず,著作権法の基本(著作物とは何か)について解説した後,人工知能生成コンテンツが著作権で保護されるか否かを論じ,最後に,関連する問題について検討する.

2.著作物とは何か

2.1 著作物の定義

 コンテンツが,著作権で保護されるためには,著作物に該当しなければならない.著作物に該当すれば,その作者(著作権法では著作者と呼ぶ)に著作権が付与され,コンテンツは,創作の瞬間から,基本的には著作者の死後70年間保護され続ける.特許権と違って,出願も,審査も,登録も,そして毎年の年金も不要である.

 では,著作物とはなんだろうか.この点については,著作権法に定義があり,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの(注4)」が著作物となる.この定義を分解すると,①思想または感情の表現であること,②創作的な表現であること,③文芸,学術,美術または音楽の範囲に属する表現であること,の三つの要件になる.

2.2 第1要件

2.2.1 思想・感情の存在

 第1要件については,ポイントが二つある.一つ目のポイントは,表現には,思想または感情が存在しなければならない,という点である.

 感情はまだしも,思想というと,かなり高尚なものが求められるのではないかと思うかもしれないが,ここに言う,思想または感情とは,人間の精神作用の結果を指すと考えられているので,考えや思いのレベルでも,十分ということになる(注5).そのため,日記のようなものでも――特段,何か考え抜いたことを記すわけではないが――思想または感情を表現していると理解される.


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