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折り紙の科学
小特集 6.
折り紙の産業応用について
Industrial Application of Origami Structure
abstract
折り紙の優れた点は展開収縮できる点である.折り紙の産業化はこの特徴をいかに安価に引き出せるかであるが,時にこの特徴を抑え込むことも要求される.例えば長年の課題であるペットボトルが一旦折り畳まれた後,スプリングバック力で元に戻ったりする.このように折り紙構造の産業化は困難であるが,最近産業化に近づきつつある①人間より器用さで劣る折り紙ロボットでも折れる型紙を求める折り紙式プリンタ,②ハニカムコアを凌駕することを目指したオクテットトラスコア,③優れたエネルギー吸収特性を示す折り紙構造,の3点をここで紹介する.
キーワード:折り紙式三次元プリンタ,折り紙ロボット,折り紙工法,アセンブリトラスコア,折り紙輸送箱
代表的な折り紙構造の一つに蜂の巣形状のハニカムコアがある.ギリシャ・ローマの時代から人類は,蜂の巣形状は優れたものであろうと信じていた.一枚の紙から作られる七夕飾りの網飾りと蜂の巣構造を結び付けて見事にハニカムコアの大量生産方式を発明したのは英国人であった.今やハニカムコアは数兆円産業に至っている.これが科学・技術大国の日本で誕生しなかったのは,日本では折り紙は尊い芸術と信じられていたこともあるだろう.野島武敏氏はこれに刺激を受け2002年に折り紙工学という言葉を作り提唱した(1).後述する理由で折り紙構造の文献を探していた筆者はそれに即呼応し,筆者の主戦場である日本応用数理学会や日本機械学会などに新たに折り紙工学研究部会などを設けて折り紙工学を推進することとなった.日本民族は世界にもまれな生粋の農耕民族,明確な四季を持ち,美しい長方形の田園風景になごまされた中で,研ぎ澄まされた美意識と人を敬う心が育まれ,礼法折り紙という日本だけの折り紙が創成されている.寝具を畳み,和服を畳む文化は2Dから4Dを創発し循環させる日常の習慣を産み「つくることで理解する」という科学観を育んだと思われる.この中で誕生した折り紙はまさに日本文化の象徴でもある.このようなことから折り紙工学を推進するのは我々日本人の使命でもある.二,三の例を挙げて現状と今後の課題について考察する.
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