特集 2-2 ディジタルファブリケーションによる回路印刷技術

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Vol.102 No.5 (2019/5) 目次へ

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2. IoTを支える技術

特集2-2

ディジタルファブリケーションによる回路印刷技術

Circuit Printing Technologies by the Digital Fabrication

川原圭博

川原圭博 正員 東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻

Yoshihiro KAWAHARA, Member (Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo, Tokyo, 113-8656 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.5 pp.393-397 2019年5月

©電子情報通信学会2019

abstract

 印刷エレクトロニクスや3Dプリンタなどを用いた製造技術の進歩が著しい.我々は,これまでこの市販の化学焼成可能な銀ナノインクを用いることで,専門知識を持たない人でも手軽に電子回路基板やセンサのプロトタイピング開発をする方法について研究を進めてきた.本稿ではディジタルファブリケーション技術を取り入れ,導電パターンを形成することで,紙やプラスチック製のシートに様々な機能を実現する方法について紹介する.

キーワード:インクジェット印刷,ディジタルファブリケーション,フレキシブルエレクトロニクス,折り紙工学

1.は じ め に

 Internet of Things(IoT)とはあらゆる‘もの’がネットワークに接続された世の中のことを指す.現在のIoTデバイスの多くは,センサの情報をマイクロコントローラで読み取り,無線通信を介してクラウドと連携しながら様々なサービスを提供するというようなものが主流である.現在様々なIoTデバイスが登場している背景には,3Dプリンタやレーザ加工機,CNCなどのディジタルファブリケーション装置の貢献が少なくない.携帯電話やコンピュータの周辺機器のきょう体を製造するためには,まず金型を作り,射出成形をするといったアナログな工程を含んだ初期費用が高く,やり直しのきかないプロセスが必要不可欠であった.ところが現在では,CADで設計した図面をそのまま3Dプリンタで出力でき,繰り返しプロトタイプの製造ができるような時代になってきた.将来あるべき究極のIoTデバイスを考えたとき,紙のような安い素材を活用して,印刷のような高スループットの製造プロセスを用いたシンプルな製造方法を採用することがより望ましい姿のように思える.我々は,3Dプリンタや導電性インクを用いたディジタルファブリケーション技術を活用したものづくり技術について,研究を進めている.本稿では,化学焼成が可能な銀ナノインクを用いて誰でも手軽に紙やプラスチックフィルム上に回路を形成する技術であるInstant Inkjet Circuitを紹介する.そして同技術を用いて専門知識を持たない人の回路作成を支援する諸技術,そして基板の多層化や,三次元化,ロボットやスピーカなどに応用した例を紹介する.

2.印刷による電子回路基板製造

2.1 電子回路の基板製造方法

 従来の回路基板を作成するための製造プロセスは銅を張り付けた絶縁体の板から,不要な銅を溶解除去して必要な配線だけを残すといういわゆるサブトラクティブなプロセスが用いられてきた.複数の複雑な工程を経る必要があるほか,有害物質を含む廃液が生じることから,環境負荷も高く,根本的には開発者が試行錯誤を繰り返すプロトタイピングには向いていない.とりわけ昨今の小形電子機器には必須と言えるフレキシブル基板については,その製造をアマチュアが手で行うことは難しく,製造業者に注文を出しても複数の工程を経て製造されるため完成までに時間が掛かる.

2.2 印刷による付加的な実装方法


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