特集 2-3 Si-RF振動子とそのセンサ応用

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Vol.102 No.5 (2019/5) 目次へ

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2. IoTを支える技術

特集2-3

Si-RF振動子とそのセンサ応用

Si-RF Resonators and Applications to Sensors

小野崇人

小野崇人 東北大学大学院工学研究科機械機能創成専攻

Takahito ONO, Nonmember (Graduate School of Engineering, Tohoku University, Sendai-shi, 980-8579 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.5 pp.398-402 2019年5月

©電子情報通信学会2019

abstract

 近年のマイクロ・ナノスケールの微細加工技術の進展により,より小形・高性能なセンサやシステムが実現できるようになった.その応用例の一つとして振動子を挙げることができる.シリコン振動子は安定な周波数信号を発生するタイミング素子や各種の高感度センサなど,より小形で低消費電力を必要とするIoT用のデバイスへの応用が期待されている.本稿では,筆者らの研究を中心として,これらIoT用のデバイス開発の一端を紹介する.

キーワード:振動子,IoT,タイミング素子,磁気センサ,バイオセンサ

1.は じ め に

 高周波(RF)振動子は,サイバー・フィジカル技術におけるフィジカル空間での末端機器におけるセンサやタイミング素子,フィルタなどの能動素子など,様々な応用のために開発がなされ,その幾つかは実用化が進んでいる(1),(2).将来のIoTネットワーク社会では,トリリオン(1兆)個のセンサが世界中で使われ,フィジカル空間とサイバー空間がシームレスに結ばれると考えられている(3).このIoT(Internet of Things)技術において,フィジカルデバイスの低消費電力化,低コスト化が必要不可欠であり,またこれらの高性能・高機能化は競争力強化のためのシステムの差別化につながる重要な要素であると言える.

 クロック信号を発生するための基準信号を作り出すタイミング素子は,周波数を有効利用し,多くの機器をネットワークに接続するための重要な素子である.また,GPS(Global Positioning System)ナビゲーションなどは精密な基準信号を利用しているため,GPSを利用した自動運転のロバスト性を高めるためにも精密なタイミング素子が必要とされる.このタイミング素子として水晶振動子を用いた発振子が広く用いられているが,しかし一般的には水晶発振子は1mW以上の消費電力を必要とし,小形化にも限界があるとされている.近年,SiTime社等が開発したSiの発振子は,水晶よりも小形にできるが,その周波数安定性は水晶の2~3倍程度悪く,また消費電力もまだ数十mWのオーダである(4).このため,100µW以下の低消費電力で動作する高安定で,低位相雑音の発振子の研究開発が進められている.

 一方,マイクロ・ナノ振動子は,機械損が少なく高いQ値を有することから小形・省電力で高感度化が可能なため,様々なセンサへの応用が進められている(5)(7).特に振動形慣性センサ,振動形圧力センサ,バイオセンサ,磁気センサなど,IoTへの応用に有用なセンサの実用化が進んでいる(3).来たるべきトリリオンセンサ社会においては,低消費電力・高感度なセンサがフィジカル空間における末端デバイスとして役割を果たすことが期待されている.本稿では,筆者らの研究を中心として,主にSi振動子を用いたタイミング素子や振動形センサの現状と開発の一端について紹介する.

2.小形タイミング素子


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