小特集 2-3 時空間基盤データの構築

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Vol.102 No.6 (2019/6) 目次へ

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2. 歴史的な文字・非文字データとICT

小特集2-3

時空間基盤データの構築

Construction of Spatiotemporal Data Infrastructures for Humanities

原 正一郎 関野 樹

原 正一郎 正員 京都大学東南アジア地域研究研究所環境共生部門

関野 樹 国際日本文化研究センター総合情報発信室

Shoichiro HARA, Member (Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University, Kyoto-shi, 606-8501 Japan) and Tatsuki SEKINO, Nonmember (Office of Digital Resources, Publications, and Public Information, International Research Center for Japanese Studies, Kyoto-shi, 610-1192 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.102 No.6 pp.572-576 2019年6月

©電子情報通信学会2019

1.ま え が き

 多様な人文学データを統合したり分析したりする上で時空間属性は重要である.実際,人文学において,地図や年表は事象の時空間関係を考察するための常とう手段である.GIS(Geographic Information System)などの普及に伴い,時空間情報に注目した人文学の研究事例や学術団体が増えている.ECAI(Electronic Cultural Atlas Initiative: http://www.ecai.org/)やPNC(The Pacific Neighborhood Consortium: http://pnclink.org/about.htm)は1990年代後半から人文学に時空間情報を導入した先駆けである.Digital Humanitiesにおいても時空間情報は主要なテーマである.日本においても,歴史分野への時空間情報の応用を標ぼうするアジア歴史地理情報学会が2012年に発足した.また情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会主催のシンポジウム「じんもんこん」においても,時空間情報に関わる発表が増えている.更に,人文GISに関する書籍も散見される(例えば文献(1)).

 人文学では,時空間データを地名や日付のように文字列で記述することが多く,数値化の必要がある.そのためには,地名を緯度・経度(経緯度)のような座標に,旧暦の日付を西暦などに対応させる辞書が不可欠である.本稿では,時空間データ基盤として,日本の歴史地名と旧暦の日付に関するディジタル辞書の構築について述べる.

2.空間基盤データの構築

2.1 地名と経緯度変換

 位置情報は,地図などによる可視化や空間的な因果の解析などに不可欠な属性である.地名辞書とは,地物(建物,市町村,河川など自然と人工にかかわらず地上にある全ての物)に対応した空間参照と関連情報の集成である.空間参照には,建物の名前・住所などのキーワードにより地物を間接的に参照する地理識別子と,経緯度のような数値により地物を直接参照する座標がある.関連情報には,地物の名称・種類・形状・階層関係(県・郡・町など)や歴史などが含まれる.地名辞書を地理識別子で検索することにより,目的とする地物の経緯度を所得する.


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