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本会選奨規程第17条による最優秀論文賞(第1回)は,下記の論文を選定して贈呈した.
(英文論文誌B 2018年3月号掲載)
近年,様々な用途での無線LANの需要が増加しており,最新の無線LAN規格であるIEEE 802.11acでは,システムスループットを改善するため複数ユーザと空間的に同時多重通信が可能なマルチユーザMIMO(MU-MIMO)技術が採用されている.アクセスポイントは,プリコーディングに各ユーザとの伝搬路行列が必要となるが,802.11ac規格では伝搬路情報取得のためのサウンディング手法も規定されている.802.11acで規定された従来のサウンディング手法は,各ユーザから伝搬路情報が含まれるCB(Compressed Beamforming)フレームが順次フィードバックされる方式であった.そのため,対象のユーザ数が多くなるにつれてCBフレームのフィードバックに要する時間も増加し,プロトコル上のオーバヘッド増大につながるという課題があった.
本論文では,この課題を解決すべく,高効率化を図ったサウンディング手法を提案している.提案方式では,各ユーザへの直交リソース情報の通知や送信タイミング制御を行う制御フレームを利用し,各ユーザからのCBフレームのフィードバックに上りマルチユーザ多重伝送を実現する.これにより,ユーザ数によらずフィードバック時間を一定の所要時間で実現でき,ユーザ数が多くなるほど,従来方式と比較して高効率化が可能となる.提案方式のオーバヘッド削減効果による有効性を計算機シミュレーションにより明らかにしている.また,サウンディング周期がスループット特性に及ぼす影響も評価し,MU-MIMOの実運用上重要なファクタとなる最適な周期についても考察を加えている.
以上のように,本論文は,MU-MIMOに必須となるサウンディング手法に関して新しい手法を提案し,現行の無線LAN規格で採用されている従来方式と比較評価することで学術的に有効であることを示したものである.また,提案方式は現在標準化作業中の次世代無線LAN規格であるIEEE 802.11axとして採用されており,産業的な貢献も非常に大きく,本賞に値する論文として高く評価できる.
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