小特集 1. ハードウェアセキュリティ研究分野の展望

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Vol.103 No.1 (2020/1) 目次へ

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ハードウェアセキュリティの課題と展望

小特集 1.

ハードウェアセキュリティ研究分野の展望

Perspectives on the Field of Hardware Security Research

松本 勉

松本 勉 正員 横浜国立大学大学院環境情報研究院社会環境と情報部門

Tsutomu MATSUMOTO, Member (Faculty of Environment and Information Sciences, Yokohama National University, Yokohama-shi, 240-8501 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.1 pp.34-39 2020年1月

©電子情報通信学会2020


本稿中の「タンパー」は,日本工業規格JIS X 19790「セキュリティ技術-暗号モジュールのセキュリティ要求事項」における規定により「tamper」に対応する用語として使用している。

本会誌の用語は,①文部省(文部科学省)学術用語集電気工学編,②本会編の改訂電子情報通信用語辞典,③本会編のエンサイクロペディアハンドブックに従う方針を採っており,①及び③に基づけば「タンパ」となるが,著者の意向により「タンパー」を使用している。

abstract

 あらゆる機器がインテリジェント化される中,セキュリティの確保が重要となっている.また,ハードウェアはセキュリティ強化に効果的に活用し得る.すなわち,ハードウェア「の」セキュリティ,及び,ハードウェア「で」セキュリティ,の両面からの研究のニーズが高まっている.本稿では暗号等のセキュリティ機能の高速・低エネルギー実装,ハードウェアの耐タンパー性・真正性,人工物メトリクス,センサへの攻撃に対抗する計測セキュリティといった,セキュリティとハードウェアが絡む多様なテーマを扱うハードウェアセキュリティ分野について展望する.

キーワード:ハードウェアでセキュリティ,ハードウェアのセキュリティ,IoT,サイバーフィジカルセキュリティ

1.サイバーフィジカルセキュリティとハードウェア

 価値を創造する新たな情報社会を指し示す概念として,フィジカル世界における対象(人や組織を含む)や事象(活動を含む)を,計測によりサイバー世界におけるディジタルな対象や事象(ディジタルツイン)として把握し,分析・処理を行い,フィジカル世界の制御につなげるサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)(図1)や,その実現手段として,機器等に通信手段を組み込み,極めて多数の機器間の連携が行えるようにしたIoT(Internet of Things)という超分散システムが考案され,日々構築がなされつつある.

図1 サイバーフィジカルシステム

 このため,サイバーフィジカルシステムの全てのプロセス(図2),すなわち,フィジカル世界あるいはサイバー世界からのデータの計測,その通信,蓄積,処理を踏まえた利用(フィジカル世界の制御を含む)と,その結果の確認,更には保守管理などの全ての側面に関し,適切なセキュリティが求められる時代が到来している.安全・安心で持続可能な未来社会を実現する上で,システム,サービスに対する悪意ある意図的な攻撃等の実態を解明し,有効な対策をとっていくことが求められている.


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