小特集 2. 暗号の高効率ハードウェア実装

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ハードウェアセキュリティの課題と展望

小特集 2.

暗号の高効率ハードウェア実装

Efficient Implementation of Cryptographic Hardware

藤本大介

藤本大介 正員 奈良先端科学技術大学院大学先端科学研究科情報科学領域

Daisuke FUJIMOTO, Member (Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma-shi, 630-0101 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.1 pp.40-44 2020年1月

©電子情報通信学会2020

abstract

 ネットワークを介してやり取りされるデータは増加の一途をたどっており,そのようなデータを安全にやり取りするためには暗号化技術が不可欠となっている.暗号化技術は安全性を担保する技術であるので本来の機能の性能を低下させることがないことが求められる.そこで,暗号を行う機能を本来の機能を行う回路と切り離した専用ハードウェアで行うことが一般的となってきている.専用ハードウェアでの暗号処理は汎用のCPU(Central Processing Unit)を使う場合に比べて圧倒的な処理性能の向上や低消費電力性能を達成することが可能である.一方で,専用ハードウェアは全ての要素をハードウェア技術者が設計するため,設計能力が暗号処理回路の性能を大きく左右する.本稿では,暗号実装の肝となる回路の高効率実装について取り扱い,多くの公開鍵暗号アルゴリズムに用いられる剰余乗算器の例を示す.

キーワード:暗号実装,ハードウェア実装,剰余乗算器,モンゴメリ乗算

1.は じ め に

 ネットワークを介してやり取りされるデータは増加の一途をたどっている.そのため,ネットワークを使用する個々人が安全にデータのやり取りを行うためには暗号化技術が不可欠となっている.しかし,暗号化技術は本来の機能に安全性を付与する付加機能であるため,導入においては本来の機能の性能を低下させることがないことが求められる.そこで,暗号を行う機能を本来の機能を行う回路と切り離した専用ハードウェアで行うことが一般的となってきている.専用ハードウェアでの暗号処理は汎用のCPU(Central Processing Unit)を使う場合に比べて圧倒的な処理性能の向上や低消費電力性能を達成することが可能である.一方で,専用ハードウェアは全ての要素をハードウェア技術者が設計するため,設計能力が暗号処理ハードウェアの性能を大きく左右する.そこで本稿では,暗号実装に関してCPUと専用ハードウェアの違いについてまず解説し,専用ハードウェアを設計する際に,演算を効率的に実行するための演算器の使い方を述べる.また,暗号実装の例として要素演算である剰余(用語)乗算を例に回路の高効率実装について解説を行う.

2.暗号処理回路

2.1 汎用CPUと専用ハードウェアの違い


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