小特集 3-3 ニュートリノ実験における高精度時刻同期

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Vol.103 No.4 (2020/4) 目次へ

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光・時刻リンク技術による高精度な周波数標準のアプリケーション
3. 応用技術

小特集 3-3

ニュートリノ実験における高精度時刻同期

Importance of the Precision Time Synchronization in the Neutrino Experiments

早戸良成 坂下 健

早戸良成 東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設

坂下 健 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所

Yoshinari HAYATO, Nonmember (Institute for Cosmic Ray Research, The University of Tokyo, Hida-shi, 506-1205 Japan) and Ken SAKASHITA, Nonmember (Institute of Particle and Nuclear Studies, High Energy Accelerator Research Organization, Tsukuba-shi, 305-0801 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.396-401 2020年4月

©電子情報通信学会2020

1.は じ め に

 素粒子であるニュートリノの研究において,高精度な時刻決定が実験の必須条件となっている,と聞くと意外に思われるかもしれない.近年の加速器を用いるニュートリノ実験では,数百nsよりも良い精度で正確な時刻を知ることができなければ成立しない.ここまでの精度を要求はしないが,天体から届くニュートリノ観測においても,正確な観測時間の記録が重要となっている.本稿ではニュートリノ研究の意義と手法を概観し,研究に「時刻」がどのような関係を持つか解説する.

2.ニュートリノとは

 1920年代,既に原子核崩壊の一種であるmath崩壊から放出される電子のエネルギーが一定値にならないことが知られていた.1930年,パウリは「電荷を持たず,物質と相互作用をほとんどせず,質量が非常に軽いかゼロの」未知の粒子を導入することで,この現象をうまく説明することに成功した.この粒子が現在のニュートリノである.相互作用をほとんどしないという性質から,実験による「発見」は1956年のライネスとカワンの実験まで待たねばならなかった.1960年代には加速器を用いた実験により,ニュートリノに複数の種類があることが発見されるなど,徐々にその性質が明らかになった.一方,1980年代末までに素粒子物理学の「標準模型」が構築された.この標準模型においてニュートリノは最も基本的な粒子である「素粒子」であるレプトンの一種とされ,質量を持たないと仮定された(図1).

図1 標準模型における素粒子


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