解説 FPGAクラスタとその相互結合網の研究動向

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解説

FPGAクラスタとその相互結合網の研究動向

Research Trends of FPGA Clusters and Their Interconnection Networks

上野知洋 佐野健太郎

上野知洋 正員 国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター

佐野健太郎 正員 国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター

Tomohiro UENO and Kentaro SANO, Members (Center for Computational Science, RIKEN, Kobe-shi, 650-0047 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.4 pp.421-425 2020年4月

©電子情報通信学会2020

abstract

 FPGAによる処理は消費電力当りの計算性能に優れており,従来のCPU処理と比較して省電力かつ高性能な計算を実現できる.また,複数のFPGAを接続したクラスタの構築により並列処理によって高い計算性能が得られることから,高性能計算への適用も期待されている.FPGAクラスタによる並列処理のためには,FPGA同士,及びホストサーバとFPGA間における通信システムが必要になるが,具体的なシステムの構築にはFPGAやネットワーク等に関する様々な専門的知識が要求される.本稿では,FPGAクラスタにおけるネットワークと通信システムについて,これまでの研究成果の紹介を行うとともに,最新の研究動向について解説する.

キーワード:FPGAクラスタ,ネットワーク,イーサネット,アーキテクチャ

1.は じ め に

 Field Programmable Gate Array(FPGA)を使った計算は,電力効率の高さや高スループットな演算が可能であるといった点から,産業界をはじめ幅広い分野において利用が拡大している.特に高い処理能力が要求される分野では,複数のFPGAをネットワークで相互接続したクラスタによる並列処理について,活発な研究がなされている.特に,人工知能(AI)やクラウド等の大規模なデータセットに対する効率的な処理が要求されるアプリケーションにおいて,FPGAクラスタは有力な選択肢の一つとなっている(1)

 このようなFPGAクラスタによる並列処理の実現には,FPGAやホストサーバを網羅した通信機構が必要になる.FPGAの利用が様々な分野に広まりつつあるため,要求される通信システムは,アプリケーションの種類や環境によって大きく変わり得る.様々な環境で高い性能を発揮するために,汎用性と通信性能を両立したFPGA間通信システムの構築が,強く望まれている.

 本稿では,FPGAクラスタのための通信システムやネットワークについて,これまでの様々な研究成果や最新の研究動向を紹介する.また,高性能計算への適用という観点から,様々なFPGAクラスタのアーキテクチャについて論じる.

2.FPGAによるストリーム計算

 FPGAを用いた計算機システムにおいて,計算性能を最大限に引き出すためには,高スループットな演算が可能な専用パイプラインによるストリーム処理が適している.これまでに提案されている関連研究の多くは,入力データストリームに対して,必要な一連の処理をつなげた深いパイプラインを適用する,ストリームコンピューティングに基づく手法を採用している.FPGA上に処理を行うモジュール単位であるProcessing Element(PE)をアプリケーションに応じて実装し,巨大なパイプラインを構築する.これにより,個々のデータのメモリアクセスを意識することなく,パイプラインへの入出力の制御のみで高性能な計算を実現できる.


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