特集 3-3 FPGAによる自己組織化マップのハードウェア化――打音検査システムへの適用に向けて――

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特集 3-3 FPGAによる自己組織化マップのハードウェア化――打音検査システムへの適用に向けて――

安永守利 正員:シニア会員 筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻

Moritoshi YASUNAGA, Senior Member (Graduate School of Systems and Information Engineering, University of Tsukuba, Tsukuba-shi, 305-8577 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.5 pp.507-513 2020年5月

©電子情報通信学会2020

abstract

 自己組織化マップ(SOM: Self-Organizing Map)は,ディープラーニングニューラルネットワーク(DLNN)と同様に,脳の神経回路網をモデルとするAIの手法である.SOMは,「教師なし学習」「学習結果の可視化」といったDLNNにはない特徴を有する.また,SOMもDLNNと同様,学習に多くの計算時間を必要とする.本稿では,はじめにSOMの基礎事項を解説する.そして,FPGAによるSOM専用ハードウェアの一例を示し,そのコンクリート打音検査装置への適用結果と有効性を示す.

キーワード:自己組織化マップ,教師なし学習,ディープラーニング,FPGA,打音検査

1.は じ め に

 ディープラーニングニューラルネットワーク(DLNN)がAIの代名詞と言えるほど脚光を浴びている.しかし,DLNNはAIの一手法であり,ほかにも様々な技術が存在する.本稿の前半では,DLNNと同様に脳のモデルから出発したAIの一手法である自己組織化マップ(SOM: Self-Organizing Map)(1)について解説する.

 SOMもDLNNと同様,そのサイズが大きくなると計算時間が増大する.本稿の後半では,FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いたSOMの高速化のための専用ハードウェアの一例を紹介する.そして,SOMの応用例として打音検査システムへの適用事例を紹介する.

2.自己組織化マップ(SOM)

 SOMは大脳にある視覚野をモデルにしており,1980年代にフィンランドのTeuvo Kohonen(当時,フィンランド大学)によって提案された.図1にその概略を示す.大脳視覚野は,ニューロン(神経細胞)が二次元に広がった単純な面構造としてモデル化できる.そして,目から入ってきた画像情報に対して,大脳視覚野内の特定のニューロンが反応することによって画像情報を認識する.例えば,白くて丸い形状が視野に入ったら,白丸に対応するニューロンが反応する.また,黒くて四角い形状が入ったら,黒四角に対応する別のニューロンが反応する.


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