小特集 オリンピック,パラリンピック,そして 小特集編集にあたって

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Vol.103 No.6 (2020/6) 目次へ

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小特集

オリンピック,パラリンピック,そして

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 堀山貴史

 2020年7月24日(金)から8月9日(日)までの17日間にわたり第32回オリンピック競技大会(2020/東京)が,続いて8月25日(火)から9月6日(日)までの13日間にわたり東京2020パラリンピック競技大会が,それぞれ開催される.との予定であったが,3月24日(火)に,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な猛威の影響により延期せざるを得ないこと,IOC・東京2020組織委員会・日本政府・東京都など内外の関係機関が一体となり遅くとも2021年夏までの実施に向けて具体的に検討していくことが発表された.

 オリンピックやパラリンピックに限らず,人々の関心が集まる出来事を契機として,新たな技術が花開くことは多い.56年前の第18回オリンピック競技大会(1964/東京)を振り返ると,言語の壁を越えて情報を伝える手段としてピクトグラム(絵文字)が導入され,競技や施設の案内デザインが考案された.以降のオリンピックに踏襲され,またパラリンピックには1988年のインスブルックでの冬季大会から導入されている.国内では,このオリンピックに続き,1970年の日本万国博覧会(大阪万博)などを経て広まったようである.

 本小特集では,東京2020大会を契機と捉えて,これを支える技術について,広い視野から解説する.様々な角度からの記事は,本会の会員の探求心の広がりを反映したものである.横方向への広がりとして,東京2020大会に限らず,各種スポーツを支える技術,更に,スポーツ大会のみならず人々の集まるイベントや施設を支える技術を取り上げる.また,時間方向への広がりとして,前回のリオでのオリンピック閉会式の東京2020フラッグハンドオーバーセレモニーから,今回の東京,そして未来へとつなぐ.

 第1章「AR/VR技術によるライブ映像演出」は,真鍋大度,花井裕也(ライゾマティクス)による.リオでの東京2020フラッグハンドオーバーにおいて注目を集めた映像制作技術やVR/AR技術について,丁寧にまとめられた参考文献のリストとともに,その源流となる研究から豊富な事例への発展を紹介する.

 第2章「オープンデータを利用したスポーツ選手・チームの定量的実力評価」は,小中英嗣(名城大学)による.スポーツのデータを得るところから始まり,選手やチームのランキング手法について,様々な競技を対象とした実験結果や豊富な参考文献とともに紹介する.

 第3章「製造現場における通信タイミングに着目したモニタリング及び通信制御」は,吉岡達哉,玉井森彦,長谷川晃朗(ATR)による.様々な施設へのIoT(Internet of Things)デバイスの導入が進んでいる昨今の状況下で,無線通信における不安定な通信を避けるための通信タイミング制御技術や,通信品質を詳細に把握する技術について紹介する.

 第4章「「個と群」――アート・サイエンス協働教育――」は,舘知宏(東京大学),野老朝雄(TOKOLOCOM),堀山貴史(北海道大学)による.3種類の長方形を組み合わせた東京2020大会エンブレムの「組市松紋」をデザインした野老を迎えての集中講義「個と群―紋様デザイン」を軸に,アートとサイエンスをまたいだ「つながり」や,未来へのつながりを紹介する.

 末筆になったが,新型コロナウイルス感染症の早期の収束を願っている.また,人類の歴史は困難を乗り越えてきた歴史でもあり,関係各位の技術が明るい未来への道しるべとなることを願っている.

小特集編集チーム

 堀山 貴史  荒木 徹也  小川 祐樹  高取 祐介  東野 武史  平井 経太  藤沢 匡哉  山口 真悟 


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