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解説
大学院大学における知的たくましさ教育
Intellectual Toughness through Education Program at Graduate Schools
A bstract
北陸先端科学技術大学院大学の教育改革として,先端科学技術研究科で実施している「知的にたくましい」人材の育成を目指した,知識科学の方法論を用いたイノベーションデザイン教育を紹介し,現在取り組んでいる博士前期課程及び博士後期課程のカリキュラム改革,強みを生かした新しい教育計画,及び,その課題を説明する.
キーワード:大学院大学,知的たくましさ,カリキュラム改革,イノベーションデザイン
北陸先端科学技術大学院大学は,先端科学技術分野における国際的水準の研究を行い,それを背景として,大学院教育を実施するため,学部を置くことなく,独自のキャンパスと教育研究組織を持つ,我が国で最初の「国立大学院大学」(独立大学院大学)として平成2年10月に創設された.平成4年に情報科学研究科博士前期課程第1期生が入学し,以降,大学院大学という特徴を強みとしたユニークな教育により日本の大学教育改革を先導する役割を担ってきた.平成16年4月から国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学に移行した.本稿では校名をJAISTと表記する.沿革は大学案内等で公開している(1).
国内においては,平成3年に設置された奈良先端科学技術大学院大学など,博士前期課程及び博士後期課程における技術者・研究者養成の国立大学院大学が,本学を含め4校設置されている.また,沖縄科学技術大学院大学や専門職大学等の各種の学校法人が,大学院大学教育を実施している.
JAIST設立当時の日本の大学においては,学部を卒業した学生の多くはそのまま同じ大学,研究科の大学院に進学していた.そのため,学部組織を備えた多くの大学院では,学部と連続する教育内容が設定され,学生が進学前に習得した知識や技術には共通性があることが想定される.しかしながらJAISTは学部組織を持たないため,入学生の出身は国公立大学,私立大学,高等専門学校専攻科など様々で,更には外国人留学生の比率も高い.更に,専門分野を変えて大学院で異なった分野の研究を進める意欲を持った学生を積極的に受け入れる方針を採っていたため,いわゆる文系学部出身の学生も受験し,入学している.このように様々な背景を持つ学生を受け入れ,大学院教育を進めるためには,入学学生の多様性を考慮した教育システムを提供する必要があった.
情報科学研究科(2016年から3研究科を統合し現在では先端科学技術研究科の情報科学系におおむね対応)では,専門分野を変え,新しい研究分野に挑戦する学生を積極的に受け入れ,専門知識の習得を効果的にすることを意図して体系的な科目編成により,コースワークを重視する教育システムを確立してきた.また,一人一人の学生に合わせた学修支援を行うため,平成3年に設置された情報科学センター(平成23年に情報社会基盤研究センターに改組)を中心に,教育環境整備の取組みが進められてきた.
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