巻頭言 新しい日常におけるICTと学会

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Vol.103 No.8 (2020/8) 目次へ

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巻頭言

新しい日常におけるICTと学会 ICT and IEICE in the New Normal会計理事 中山正敏

 新型コロナウイルスにより大きな影響を受けられた会員の皆様に心からお見舞いを申し上げます.命に関わる事例もあり,つらい思いをされた方もおいでかと思います.心身面での快復と経済面での回復をお祈りする次第です.

 今回,テレワークやWeb授業などで情報通信(ICT)の重要性が再認識されました.Web会議の実用性を実感された方々も多かったのではないでしょうか.一方では,多くの先生方が短期間でのWeb授業準備に御苦労されたことと思います.更にWeb飲み会という驚く使い方も現れました.

 関係者の陰なる御努力の結果と推察しますが,情報通信ネットワーク自体は大きなトラブルもなくトラヒックの増加に対応できているようです.一方,残念ながらテレワークやWeb授業という利活用という領域では,その準備や移行などで遅れていた面が現れたと感じました.常々言われてきたことですが,我が国はハードウェアには強いがソフト的な面が弱い,別な視点で言うと,技術の利活用が不十分であることが再び浮き彫りになったと感じます.今回のコロナ禍も災害の一つと言えますが,災害では様々な技術の有用性が確認されるとともに課題もあぶり出されます.不謹慎な言い方かもしれませんが,災害の経験は,研究や技術開発の大きなチャンスでもあります.また個々の技術者においても単に性能向上だけを目指すのではなく,その利活用を念頭に提案し研究開発を行っていくことが必要です.

 さて,昨年,最近の小学生の遊びについて先生方とお話する機会がありました.下校の際に友達と,「4時に集合して遊ぼう」と約束して帰宅するそうで,微笑ましいと思ったのですが,なんとその集合先はネットゲーム上のバーチャルな集合場所であると聴いて大いに驚きました.このコロナ禍で,好むと好まざるとにかかわらず,私たちも今どきの小学生と同じになったわけで,逆にこれを利用して新たな課題を考える機会にできないでしょうか.例えば,各学会や研究機関によってWeb上で行われている講演会や研究会に聴講参加することです.今回の事態に各技術分野や組織としてどのように対応すべきかを含め,多くの議題で発表や議論がなされています.テレワークであれば上司や先生の目を気にすることなく聴講が可能です.また出入りも自由ですので本業務の合間に興味のある講演を聴くこともできる.交通費(旅費)が不要なので,その点でも参加しやすい.ちなみに電子情報通信学会においても9月のソサイエティ大会はWeb上で開催致します.発表者以外の方にも,是非多数聴講して頂き,個別の技術課題はもちろんのこと,ICT利活用や社会的影響についても議論して頂きたい.また上司の皆様には,旅費や移動時間が不要になることを鑑み,従来以上の聴講参加者を認めて頂けますようお願い致します.

 ところで,電子情報通信学会も積極的にICTを利活用した運営を進めるべきと考えます.ICT利活用が不十分で「紺屋の白袴」などと揶揄される状況は情けない話です.新しい利活用を進めるための先立つものとしての学会の財務状況ですが,これまでの諸先輩による様々な施策により,幸いにもここしばらくは事実上の黒字運営が続いています.正直,今回のコロナ禍の影響は,まだ見通せていませんが,財務的には新しい施策を実施することは十分に可能です.学会としては従前より様々な新しい施策を行っていますが,会員の皆様においても,研究開発の技術者としてだけではなく,各種ICT技術の利用者視点からも学会の運営活動に新たな提案をお願いする次第です.


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