宇宙通信新時代の幕開け 小特集編集にあたって

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Vol.103 No.8 (2020/8) 目次へ

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小特集

宇宙通信新時代の幕開け

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 宮村 崇 齋藤 恵

 私たちの日常生活の中で,宇宙通信や宇宙開発分野に関わるニュースを以前より目にする機会が増え,身近になってきています.その理由の一つとして,宇宙開発・通信分野が民間の参入により活気付いてきていることが挙げられます.これまで,ばく大な費用が掛かる宇宙開発は一般的に国のプロジェクトとして国家主導で行われていました.しかし,近年は国の力に頼らず,民間企業が自分自身の力で取り組むようになってきています.その背景には例えば技術の進歩によるロケットや人工衛星等の低コスト化などが挙げられます.

 現在では大手だけではなく,ベンチャーや異業種企業等も含めてあらゆる民間企業が参入できるようになり,また国もそれを積極的に後押しすることで,宇宙を利用した新しい商用サービスが広がり,今後更にマーケットが成長していくことが期待されています.実際に宇宙ビジネスのベンチャーは世界で年間約数百社のペースで増えており,2040年には市場規模は100~300兆円になるという推測もあります.

 ロケットをはじめ人工衛星を用いた通信・測量や防災システム,資源開発,宇宙旅行など,民間企業は民間企業ならではの経営的視点やスピード感で事業を進めていき,また探査や科学分野等は引き続き国が集中して推進するという,官民がそれぞれ得意な役割を分担して進めていくという新しいスタイルが確立されつつあります.

 民間の取組み例の代表である米国スペースX社は2002年にアメリカで設立された宇宙ベンチャー企業ですが,日本の著名なIT企業の社長がスペースX社の宇宙船を利用した月旅行を計画したことで国内でも一躍有名になりました.スペースX社は今年に入り有人宇宙船の初の打上げに成功するほか,同社のスターリンクプロジェクトにおいて,コンステレーション型小形通信衛星スターリンクの100機近い低軌道衛星同時打上げに複数回成功するなど低軌道衛星インターネットの商用化も目前に控えている状況です.また,ほかにも何社かが低軌道衛星によるグローバルな通信網を構築することを計画するなど,将来的には屋外の携帯通信のトラヒックの何割かは衛星経由という時代が身近に迫っていると感じられます.

 このように技術的にもビジネス的にも宇宙通信分野は,今新しい段階に入りつつあると言えますが,日本国内でも多くの試みが行われ,世界に向かって発信できる技術革新が数多く存在しています.今回はこのような背景の下,編集チームとして本小特集を企画するに至り,関連の各分野第一線の方々に執筆をお願い致しました.新しい宇宙通信の最先端の動向を本小特集で皆様にお届けできたらと存じます.

 最後に,本小特集の趣旨に御賛同下さりお忙しい中御寄稿下さった執筆者の皆様,本小特集の企画から御尽力頂きました編集チームの皆様,学会事務局の皆様に心から感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 宮村  崇  齋藤  恵  岡本 英二  阿部 順一  大島 正資  葛西 恵介  熊谷 太一  小島 政明  白戸 裕史  高橋 英憲  東村 邦彦  中川 拓哉  藤尾 俊輔  牧 謙一郎  町澤 朗彦  八木 秀樹  山田  渉  四方 博之


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