食とICT 小特集編集にあたって

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Vol.103 No.9 (2020/9) 目次へ

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小特集

食とICT

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 井ノ上直己

 農家の高齢化による労働力不足等から,人々が生きていく上でなくてはならない野菜や穀物などの食物栽培にICT技術,ロボットやAI技術等を導入するスマート農業が近年盛んに取り組まれている.更に,農業だけでなく「食」に関する様々な分野にICT技術を活用するフードテック(Foodtech)が注目され,「食」のサプライチェーン全体に広まりつつある.そこで本小特集では,「食」のサプライチェーンの生産,物流,加工,調理,消費の各プロセスにおけるICTの活用事例や今後の展望について,各分野で取り組んでおられる研究者の方々に紹介頂いた.

 まず第1章で,食×ICTの動向について,マルチメディア処理の観点からFood Computing技術の動向について相澤清晴氏に紹介頂いた.この章では,食事画像認識技術やマルチメディア処理を使って摂取した食事を管理する事例を取り上げて紹介頂いた.第2章で,「食」の生産の観点から,リモートセンシングによる農作物の生育診断について,本間香貴氏,橋本直之氏,牧 雅康氏,倉本泰隆氏,趙 昱氏,八幡晃一郎氏,山本知史氏に紹介頂いた.この章では,作物の生育診断に資する情報を遠隔から取得するため,衛星リモートセンシング,UAV(Unmanned Aerial Vehicle)リモートセンシングの最新動向について実利用例とともに紹介頂いた.第3章では,「食」の物流の観点から,保冷物流における温度逸脱トラブルの回避を目的とした温度管理に関する動向を諏訪雄二氏,坪内繁貴氏,川崎昌宏氏に紹介頂いた.物流過程における温度管理を低コストで実現するために,設定温度以上で変色し温度を下げても色が元に戻らない性質を持つ温度検知インクとこれを使ったシステムについて紹介頂いた.第4章では,「食」の加工の観点から,味覚と嗅覚センサの最新動向を都甲 潔氏に紹介頂いた.味覚と嗅覚といった化学感覚を測るセンサは近年のAIの発達と連動して大きく発展しており,そこで味と匂い・香りを数値化するセンサの原理と応用システムを紹介頂き,更にその結果生まれる将来展望についても紹介頂いた.第5章では,「食」の調理の観点から,自然言語で記述されたレシピデータを機械可読化する取組みを,原島 純氏,犬塚眞太郎氏,伊尾木将之氏に紹介頂いた.この章では,既に大量にレシピ情報を有しているクックパッド社での取組み事例を詳しく紹介頂いた.第6章では,「食」の消費の観点から,五感に働き掛けて食体験を豊かにするHuman Food Interaction技術について鳴海拓志氏に紹介頂いた.Human Food Interactionは計算機を介することで人と食との関係を再考・再構築する学術領域であり,この章では,食にまつわる感覚の仕組みや多感覚提示を紹介頂いた上,学術領域での最新動向を紹介頂いた.

 最後に,お忙しい中,本小特集の原稿を御執筆頂いた執筆者の皆様,記事構成の提案や調整等で多大な御協力を頂いた小特集編集チームの皆様,学会事務局に深く感謝致します.

小特集編集チーム

 井ノ上直己  鈴木 源太  永田 真斗  野村 晶代  森 健太郎


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