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防災・減災に向けた災害監視・予測技術
小特集 1.
陸域観測技術衛星を用いた災害監視技術
Disaster Monitoring Technologies by ALOS Series
abstract
陸域観測技術衛星(ALOS)シリーズは,2006年1月から5年強運用したALOS(光学,SAR:合成開口レーダ),2014年5月に打ち上げて現在運用中のALOS-2(SAR)に続き,2020年度以降に打上げ予定のALOS-3(光学),ALOS-4(SAR)が計画されている.防災関連府省庁や自治体,海外機関において,災害監視にALOSシリーズが活用されている.本稿では,衛星を用いた災害監視技術について,特にSARによる観測技術について報告する.
キーワード:災害監視,陸域観測技術衛星,ALOS,SAR
ALOS(Advanced Land Observing Satellite,2006年1月から2011年5月まで運用)は災害監視以外に地図作成,地域観測,資源探査をミッションとして開発され,2種類の光学センサとLバンド合成開口レーダ(SAR: Synthetic Aperture Radar)を搭載する4t級の大形衛星(高度692km)である.
ALOSの本格運用開始前に「防災のための地球観測衛星システム等の構築及び運用の進め方について」(2006年9月)により,防災関連府省庁による地球観測衛星の防災利用に関するニーズが取りまとめられ,ALOSを用いた防災利用実証実験を行うとともに,ALOS以降の地球観測衛星システムの研究開発に反映された.
ALOS後継機の検討において,防災利用ニーズを踏まえ,レスポンスの向上,観測頻度の向上の点から,光学衛星とSAR衛星に分けて開発を行うこととし,ALOS-2(高度628km)を2014年5月に打ち上げ,現在も運用中である.
SARによる観測は,光学観測が対応できない夜間や悪天候時の広域観測能力が期待され,ALOSでは10m,ALOS-2では3mの高分解能観測を可能とした.視線方向を変更できるようにフェイズドアレー方式の電子ポインティング技術を開発し,即時性,再訪性を向上させた.また,干渉SAR技術により,地震や火山による地殻変動の全容把握や地盤沈下等の把握を可能とした.
SARは,電波を対象に向けて送信し,散乱された電波を受信して処理することで,二次元の画像を得るレーダである(図1).送信波は周波数変調されたパルス信号であり,衛星が進みながら,1秒間に数千回の頻度で送信と受信を繰り返す.こうして得られた受信信号に,パルス圧縮処理や合成開口処理というディジタル信号処理を地上で施すことで,数m~数十mといった高い空間分解能(解像度)の画像を得る.SARの観測は,太陽光を光源としないため夜間でも観測が可能であり,また,雨や雲などに妨害されることなく観測が可能である.この特徴は,悪天候下で発生することが多く,速報性を必要とする災害の観測に,特に効果を発揮する.
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