小特集 2. フェイズドアレー気象レーダを用いた超高速降水予報

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防災・減災に向けた災害監視・予測技術

小特集 2.

フェイズドアレー気象レーダを用いた超高速降水予報

Super-rapid Precipitation Forecast Using Phased Array Weather Radar

三好建正

三好建正 国立研究開発法人理化学研究所計算科学研究センター

Takemasa MIYOSHI, Nonmember (Center for Computational Science, RIKEN, Kobe-shi, 650-0047 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.103 No.9 pp.924-930 2020年9月

©電子情報通信学会2020

abstract

 気候変動も関係し,ゲリラ豪雨などの激しい気象が増え,脅威となっている.フェイズドアレー気象レーダは,僅か10分の間に急激に変化する積乱雲を詳細に捉える新型センサである.スーパコンピュータ「京」の計算パワーを生かし,フェイズドアレー気象レーダの観測ビッグデータを使った桁違いのゲリラ豪雨予測の先端研究が切り開かれた.本稿では,様々な降水現象と災害リスクについて紹介し,フェイズドアレー気象レーダの特徴と,それを生かした超高速降水予報技術について述べる.

キーワード:数値天気予報,データ同化,ナウキャスト,高性能計算,ビッグデータ

1.多種多様な降水現象と災害リスク

 近年,気候変動の影響も関係して,異常気象の頻度や激しさが増している.台風や集中豪雨による災害が毎年のように頻発し,効果的な対策が求められる.気象の主な変数は,風,気温,気圧,水物質である.このどれもが人間活動に影響する(表1).本稿では,降水現象(水物質)に的を絞って議論する.

表1 気象変数と人間活動への影響リスクの例

 降水現象にも様々ある.雨,雪,あられ,ひょうなど降水粒子の種類も多い.また,対流性降水,層状性降水で性質が異なる(表2).その上,対流性降水には様々なスケールの現象がある.対流性降水は,一般に数kmの大きさを持つ積乱雲から構成される.これが単独である場合もあるし,数十km規模の集団などに組織化したり,数百km規模に大きく組織化した台風もある.

表2 降水の種類と特徴,現象の例

 単独の積乱雲は,1時間もしないうちにその一生を終える.これが組織化すると,10時間程度持続することがある.台風の場合は10日程度にも及ぶ.同じ対流性降水でも,このように様々異なる現象がある.結果として,対応する災害リスクも違ってくる(表3).

表3 対流性降水のスケール別分類


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