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経済学者,経済コメンテータ崔真淑さんによる,理系も知らなくてはいけない今のグローバル経済学
Why Do We Need Economics?
本稿は,慶應義塾大学理工学部学生向けに特別講演を行った内容をベースに,電子情報通信学会会誌記事のために編集・制作したものである.
【崔】今,何で日本の企業の元気がないのか.一つ言われているのが,特に日本の製造業がハードとソフトの分離に遅れたからじゃないかと言われています.
今,日本の産業,世界の産業の主流となっているのがディジタルであるソフト産業です.ビッグデータを扱うことであったり,人工知能であったり.正に皆さんの得意分野だと思います.
ものづくり最高だねって言われていた社会から,ハードとソフトの分離が起きたことで,ソフトの社会に拍車をかけたのが,パソコンの変革だと私は考えています.
そういったパソコンの時代の次の時代,何が起こるか.皆さんスマホとかはお持ちですか.ガラケーの人っていますか? 多分あんまりいないと思いますが,ガラケーを持ったことがある方っていらっしゃいますか.(ちらほら手が挙がる)
ありがとうございます.
日本では三菱電機もNECも富士通も東芝もシャープもサンヨーも,皆ガラケーを作っていました.でも気づいたら日本のメーカ,ほとんど携帯電話スマートフォンを作っていません.何が起きたのか.ガラパゴス携帯と言われるだけあって,あの当時もすごい携帯電話がたくさんあったのです.でも携帯電話そのものを買い替えないと,新しいソフトも変えられないという,そういう時代だったんです.そこに革命を起こしたのがAppleです.ハードとソフトの分離を,携帯電話にも導入したと言われています.このiPhone,アプリを自分で消したり入れたりすることで,好き勝手にソフトをインストールできますよね.何ならiOSのバージョンアップも勝手にやってくれます.中身,ソフト,ハードを買い替えなくてもできます.そのハードとソフトの分離が今,スマートフォン,携帯電話に起きたことが日本の電機メーカが携帯電話を作らなくなった原因は,そんなところにあるんじゃないかと言われています.
ですから私が何でこんな話を冒頭でしたかというと,GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)ってすごいね,何かすごいらしいよ,だけではなく,なぜ日本がその中に入れなかったのか.それはアメリカのGAFAをはじめ,ディジタル企業がハードとソフトの流れを次々に作っていったことがあるんじゃないかっていうことをお伝えしたくて,お話させて頂きました.
じゃあそのディジタルの世界でハードとソフトの分離の流れにどんどん乗っていったGAFAはそもそもどんなビジネスなのかっていうことを見ていきます.そもそもGAFAとは?
まずAppleっていうとiPhone.iPhoneユーザの方どのくらいいますか?(約半数の手が挙がる)ありがとうございます.高いっていうよりは皆さん使いやすいからそのまま使っちゃうなっていう方が少なくないと思うんです.Appleっていうのは売上高の63%がiPhoneの売上げです.正に,メーカのようなそんな形になっています(図1).
でもAppleは単に物を売るだけではなく,ハードとソフトの分離を引き起こしただけあって,サービスや音楽聴き放題の事業を行っています.
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