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量子機械学習
6.
雑音のある量子コンピュータの最近の動向
Latest Trend on Noisy Quantum Computers
昨今量子情報ブームが再来し,量子コンピュータはクラウド上で誰もが簡単に試せる時代になった.実機で量子誤り訂正は実現していない現在では,全ての量子コンピュータにおいて雑音は不可避であり,計算結果にエラー(誤り)が存在するため,必ずしもプログラムどおりに計算結果を得ることができない.そこで,今ある量子コンピュータを活用するためには,エラーとうまく付き合っていく必要がある.本稿では,量子コンピュータのプログラムの開発環境を紹介するとともに,雑音のある量子コンピュータの性能指標やエラーの軽減手法などの工夫も紹介する.
キーワード:雑音のある量子コンピュータ,ソフトウェア開発キット,性能指標,エラーの推定と軽減
量子コンピュータは理論的な研究と実験室内における研究が長らく行われてきた一方で,近年はクラウド経由で量子コンピュータの実機が利用可能になってきた.利用可能な量子デバイス,量子計算のサービス,ライブラリの種類がそれぞれ増えてきており,量子コンピュータ用のプログラムの実装と実機を用いた実験のハードルが下がってきている.量子コンピュータの応用として現在注目されている分野としては,量子機械学習,量子化学,組合せ最適化,ファイナンスなどがある.量子コンピュータ用の各種ソフトウェア開発キット(SDK)やライブラリの中にはこれらのアルゴリズムの実装を含んでいるものもあり,比較的簡単に量子コンピュータの実機を用いて量子アルゴリズムを実際に試すことができる.しかしながら,現在利用可能な量子コンピュータは雑音の影響で実行結果にエラー(誤り)を含んでいたり,量子ビット(用語)数が余り多くなかったりといった制限がある.そのため,より精度の高い結果を得るためには雑音の影響を軽減するための手法が必要となる.また,雑音を考慮した上で異なる量子コンピュータの性能を比較するための指標も重要である.本稿では,量子ボリュームと呼ばれる性能指標を紹介するとともに,雑音のある量子コンピュータの性能を引き出すための各種テクニックを紹介する.なお,本稿で参照している情報は2021年5月時点のものである.
量子コンピュータの近況を,量子デバイス,量子計算サービス,ソフトウェア開発キットの観点で概要を紹介する.
量子コンピュータのデバイスとしては,超伝導量子回路,イオントラップ,光子,量子ドットによるものなどが提案されている.その中でも一般的にアクセスしやすいのは超伝導量子回路とイオントラップの量子コンピュータである.量子コンピュータ用のプログラムは量子回路(用語)の形で表されることが多く,どのデバイスでも基本的に同じ量子回路を実行できるが,結果はデバイスの性能によって変わる.また,特定のデバイスでしか実行できない命令もある.例えば量子回路の途中で測定する機能である.
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