小特集 本格的な周波数共用時代の幕開け――6Gの爆発的な無線利用増大を見据えて―― 編集にあたって

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Vol.104 No.12 (2021/12) 目次へ

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小特集

本格的な周波数共用時代の幕開け

――6Gの爆発的な無線利用増大を見据えて――

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 有吉正行

 現代の社会システムや人々の生活を支える無線通信は,IoT活用やディジタル変革の流れの中で,今後ますますの利用増加が見込まれている.無線通信のインフラ基盤としては,第5世代移動通信(5G)の運用が開始され,その次の第6世代移動通信(6G)に向けた研究開発が進められる中で,更なる周波数資源の確保が課題となっている.周波数共用は,このための抜本的な方策の一つとして大変期待されており,これまでのように周波数を特定の用途が固定的に利用するのではなく,限りある周波数資源をニーズに合わせて適応的,効率的に利用するアプローチである.周波数共用の実現形態として,電波の利用環境に応じて利用周波数を含む無線パラメータを変更して運用するシステム概念は,2000年前後から議論され要素技術の研究開発も進められてきたが,6G時代を見据えた昨今,いよいよ無線システムの円滑運用を支える一つの大きな鍵として,実効的な導入の期待が高まっている.

 そこで,「本格的な周波数共用時代の幕開け――6Gの爆発的な無線利用増大を見据えて――」と題した小特集を企画した.周波数共用の実システムへの適用には,技術面のみならず,これまでの周波数運用の歴史的経緯や各国の政策事情に関する様々な課題がある.本小特集では,周波数共用の本格的な導入に向けて,その必要性を論じた上で国内外の動向を整理する.そして,動的周波数共用を実現する主要技術と,周波数資源管理のための「見える化」技術を紹介し,現在の社会実装状況及び将来の周波数共用の高度化を展望する.

 第1章は導入として,周波数共用を理解するための基礎について概説する.総務省における周波数共用の技術的要件検討のプロセスを交え,周波数の割当,異業務間の共用の考え方,及び周波数共用の基本原理を解説する.

 続いて,周波数共用に向けた国内外の動向を概説する.第2章では日本国内における周波数政策について,過去の議論も振り返りながら,時間経過とともに現在の状況と取組みを理解する.第3章では海外に目を向け,米国や欧州における周波数共用に関する取組みや実事例を紹介する.また,現在日本ではなじみのない周波数オークションについても現状と課題について論じている.

 技術的側面からは,まず第4章で動的周波数共用を実現する主要技術について,空間軸,時間軸,周波数軸のそれぞれの切り口から解説する.第5章では,電波環境の可視化技術について述べる.周波数を安定的に共用するためには,利用者あるいは周波数共用システムが利用中の通信品質を高精度に推定することが重要であり,電波環境を可視化することでこれを可能にする.

 第6章では,我が国における周波数共用の実用化状況について述べる.社会実装が進む事例として,テレビホワイトスペースを利用するシステムの運用調整の仕組み,及び2.3GHz帯ダイナミック周波数共用管理システムを紹介する.最後に第7章で,周波数共用システム高度化の将来展望として,システム構成,課題,要素技術の観点からまとめる.

 このように,周波数共用の本格的導入の素地は整いつつあり,6Gではその円滑な運用を支える要素になると期待される.本小特集が,周波数共用の技術的,社会的な意義に対する理解を深め,社会基盤としての無線通信の発展の一助になれば幸いである.

小特集編集チーム

 有吉 正行  宮村  崇  大辻󠄀 太一  家  哲也  石津健太郎  河野 通隆  小西  聡  佐々木重信  高田 潤一  田久  修  長谷川幹雄  藤井 威生  矢野 一人  山本 高至  吉野  仁 


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