解説 二次元物質ファンデルワールス接合の作製技術構築と物性創発

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Vol.104 No.12 (2021/12) 目次へ

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 解説 

二次元物質ファンデルワールス接合の作製技術構築と物性創発

Recent Progress in Assembly Techniques and Material Sciences of van der Waals Heterostructures

町田友樹

町田友樹 東京大学生産技術研究所

Tomoki MACHIDA, Nonmember (Institute of Industrial Science, The University of Tokyo, Tokyo, 153-8505 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.12 pp.1255-1262 2021年12月

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 二次元層状物質がファンデルワールス力によって積層されたファンデルワールス接合では,界面において格子整合の制約がなく,原子レベルで平たんな理想的界面が実現し,構成要素となる二次元結晶の選択肢が極めて広い.更に層間のツイスト角度という従来の材料系にはなかった自由度によってバンド構造が制御できる.本稿ではファンデルワールス接合作製技術の発展について概説し,この新規マテリアル系で観測される物性現象について紹介する.

キーワード:グラフェン,二次元材料,ファンデルワールス接合,量子輸送現象

1.ファンデルワールス接合

 グラフェンをはじめとする単原子層膜がファンデルワールス力によって積層されたファンデルワールス接合では,界面において格子整合の制約がなく,原子レベルで平たんな理想的界面が実現し,構成要素となる二次元結晶(用語)の選択肢が極めて広い.更に層間ツイスト角度によってバンド構造までもが制御できる.これは半導体ヘテロ接合など既存の材料系ではあり得ない自由度である.我々のグループでは様々な二次元結晶のファンデルワールス接合を作製して量子輸送現象の研究を推進してきた.更に自律ロボットシステムを用いたファンデルワールス接合作製システム,機械学習を利用した原子層数の判別,凹凸のある構造への原子層転写など,複合原子層構造の作製技術も構築してきた.

 本稿ではまずファンデルワールス接合の作製技術の発展について概説し,ロボティック原子層積層システム及び自動原子層探索システムについて紹介する.後半ではファンデルワールス接合において観測されてきた物理現象についてまとめる.「多様な二次元物質」×「重ねる」×「ひねる」によりファンデルワールス接合の組合せは無限であり,膨大な未開拓領域が広がっている.ファンデルワールス接合が新たな学理・素子応用創出の理想的な舞台になり得ることを伝えたい.

2.ファンデルワールス接合の作製技術構築

 2004年のグラフェン作製により原子層科学の幕が開き,積層技術の開発によって様々なファンデルワールス接合が作製可能となった.作製技術の発展は四つの世代としてとらえることができる(図1).

図1 ファンデルワールス接合作製手法

2.1 第1世代:メカニカルへき開


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