解説 脱はんこの現状と課題――ディジタル化社会へ向けた取組み――

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Vol.104 No.12 (2021/12) 目次へ

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 解説 

脱はんこの現状と課題

――ディジタル化社会へ向けた取組み――

Current Status and Issues Away from Personal Seals: Toward the Realization of a Digitalized Society

中村洋介

中村洋介 富士通株式会社研究本部

Yosuke NAKAMURA, Nonmember (Research Unit, Fujitsu Limited., Kawasaki-shi, 211-8588 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.12 pp.1251-1254 2021年12月

©電子情報通信学会2021

A bstract

 新型コロナウイルスの感染拡大により,従来の行政手続では当たり前であった,書面主義,押印原則,対面主義が課題となっており,行政手続における脱はんこが求められている.しかし,脱はんことは単に不要な押印をなくすことにとどまらず,手続に必要な本人の意思やそこに含まれる信頼など,意味のある押印が持っている役割をディジタル技術をベースにどのように保証していくか,が求められている.本稿では,脱はんこをめぐる動向と業務のディジタル化,そしてこれをインターネット上で実現するためのTrust as a Service(TaaS)を紹介し,将来の脱はんこ社会に向けて展望する.

キーワード:本人の意思,信頼,電子署名,業務ディジタル化,Trust as a Service

1.は じ め に

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により,我々を取り巻く環境はウィズコロナと言われる時代へ大きく変化した.2020年4月16日に全国に発令された緊急事態宣言において「人との接触8割減」が要請され,業務のディジタル化・テレワーク化が進んだ.例えば,東京都が2020年9月に発表した「テレワーク導入実態調査」(1)によると,都内の従業員30人以上の企業におけるテレワークの導入率は57.8%で昨年度の2.3倍に上昇し,この傾向は中小企業においても同様であると報告されている.一方,法制度や商習慣上の理由により,契約書への押印などは紙ベースでの対応が主であり,わざわざ書類への押印のためだけに出社を余儀なくされる場面も多い.従来は当たり前であった,書面主義,押印原則,対面主義の3原則がテレワークの更なる推進における課題となっている.具体的には,書面を電子文書に,押印を電子署名に,対面を電子認証に移行し,業務手続を紙書面に押印する形から電子データへ電子署名を付与する形へ変換,いわゆる脱はんこ化をディジタル技術により実現することで,業務のディジタル化・テレワーク化を更に推し進めていく必要がある.

 本稿では,ウィズコロナ時代に標準となる業務のディジタル化,テレワーク化を推し進めるための脱はんこの現状や脱はんこの在り方とこれに対する取組みについて説明する.2.では,脱はんこをめぐる世の中の動向として,行政手続における押印の見直しや脱はんこで真に求められることについて説明する.3.では,業務のディジタル化に伴う脱はんことして「押印」「対面」「書面」のディジタル化と,はんこが持つ本人の意思や信頼をディジタルデータ上で保証するための海外の事例などについて説明する.4.では,業務のディジタル化を実現するためのTrust as a Service(TaaS:タースと呼ぶ)について説明する.

2.脱はんこをめぐる世の中の動向


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