はじめに

　思い起こせば，30数年前，お茶の水女子大学理学部を卒業した私は，(株)リコーソフトウェア研究所へ就職し，ITエンジニアとしてのキャリアをスタートさせた．その後，結婚，出産，育児，博士取得，転職といったライフイベントを経験し，なんとか今日に至っている（図1）．ここまで働き続けることができたのは，私が職業として「ITエンジニア」を選択したからだと感じている．一般にITエンジニアと言うと，仕事がきつい，激しい，休めないなど，いわゆる“3K”のイメージがあるが，実は比較的男女格差が小さい，復職・転職しやすい，在宅での業務がしやすいといった，女性に適したメリットもある．育児と仕事の両立が厳しい，「ガラスの天井」があるといったような，女性参画において日本の社会が抱える構造的な課題も，ITエンジニアならば他業種に比べ克服しやすい．このコラムでは，ITエンジニア職が女性にとって適した職業であることと，ITエンジニアだからこそ可能なキャリア開発について，私の経験も交えつつ述べていきたい．

 IT業界における女性の参画状況