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解説
推定結果の確からしさも評価するFalse-aware AI(FAI)
FAI: False-aware Artificial Intelligence That Validates Confidence of Estimation
A bstract
専門家の判断を模擬し,効率的に分担するためのFalse-aware AI(FAI)について解説する.FAIはデータを分類することに加え,分類結果が確からしくないと判断した場合に,その分類結果を棄却する機能を有する.分類を棄却されたデータに関する判断は専門家に委譲されるが,全体としては高い分類精度を維持しつつ,専門家の負担を軽減することができる.FAIは教師あり学習や棄却オプションと呼ばれる技術を組み合わせることで構成される.従来は棄却の精度に難があったが,バギングや乱数による擬似データ生成を用いて性能を向上させている.
キーワード:機械学習,棄却オプション,確信度,バギング
近年,顔の識別・音声の認識・言語の理解など,人間の基本的な認知機能を機械学習(特に深層学習)で高精度に模擬することが可能となってきた.一方で,医者やネットワークオペレータ等の,専門家の判断を機械学習で模擬する試みは成功例が比較的少ない.専門家の判断は影響が大きいため,その判断の模擬も高い精度で行う必要がある.もし十分な精度を得られていない場合,誤診断により患者に危険が及ぶ場合や,誤った判断で通信ネットワークが機能不全に陥るケースが生まれる.
機械学習により人間の思考を高精度に模擬する際は,高品質な訓練データは多ければ多いほど良いというのが通説である.しかしながら,専門家は本質的に人数が少なく,機械学習に用いる訓練データを数多く集めることは容易ではない.このように,高い精度が求められる,しかし多量の訓練データの収集が容易ではない分野では,機械学習の適用は課題が多い.
本稿では,機械学習により専門家の判断を模擬する容易ではない問題へのアプローチとして,筆者らの提唱するFalse-aware AI(FAI)を紹介する.FAIでは,専門家の特定の判断を丸々置き換えるのではなく,専門家とAIが分担することで負担を軽減するアプローチをとっている.その動作イメージを図1に示す.図1に医療診断という例を当てはめると,専門家が「医者」,データは「レントゲン等の医療画像」となる.その場合,クラスは「症状」となり,それらの具体例は“健康”,“骨折”,“肺炎”等となる.FAIは,専門家の判断を模擬した分類モデルを構築することに加えて,データを分類する際にその確からしさを定量化する.その確からしさが小さい(自信なし)のであれば専門家に判断を委譲し,確からしさが大きい(自信あり)のであれば,それは自動で分類させる.これにより,全体として高い精度を維持しつつ,幾つかの判断をAIが代行することで専門家の負担を軽減することを実現している.上述した医療診断の例では,FAIも診断をするものの,自信がない場合は医者に判断を求めることになる.だが結果として,医者の負担を減らすことが可能となる.
本稿では,FAIを理解するための基本的な教師あり学習と従来の課題,FAI特有の技術を解説していく.
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