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解説
小形無人航空機(ドローン)及び周辺技術の研究開発動向と展望
R&D Trends and Prospects for Small Unmanned Aerial Vehicles(Drones)and Peripheral Technologies
A bstract
世界のドローン産業は,目下持続的安定期に入っている.特徴的な動向としては,ドローン産業は情報駆動形社会の先端を行く産業で,コロナ禍の中で対面式より非接触なリモートワークが推奨され,ドローンはその先端を行く革新技術であることが認識された.そして,ドローンはIoT,ビッグデータ,5G,クラウド,AI,スマートフォンという最もホットな先端技術やツールと極めて相性が良いため,ドローン産業はこれらの先端技術を有する企業との連携,分業や協業が加速しているのが最近の特徴である.本稿では,ドローンの周辺技術を中心に最新研究動向について展望する.
キーワード:大脳形ドローン,AI,自律性,5G,スマートフォン,UTM
世界のドローン産業は,一時期の過度な熱狂ブームやその後の極端な失望感を脱して持続的安定期に入っている.特徴的な動向としては,ドローン産業はデータドリブン社会(情報駆動形社会)の先端を行く産業で,コロナ禍の中で極めてイノベーティブな技術であることが認識され始めた.すなわち,ドローンは飛行ロボットとして医薬品の配送に従事している一方で,ドローンが収集するデータは正にビッグデータであること,このビッグデータを5Gネットワーク経由でクラウドコンピュータに大容量高速送信する.クラウドが取得したビッグデータをAIで解析することで高い付加価値を生む.このデータドリブン社会の基礎に位置するのがドローンであり,その価値が見直されている.また,ドローンはIoT,ビッグデータ,5G,クラウド,AI,スマートフォンという最もホットな先端技術やツールと極めて相性が良く,逆に,これら先端技術やツールとつながらなければ価値がないとも言える.この結果として,ドローン産業はこれらの先端技術を有する企業との連携,分業や協業が加速しているのが最近の特徴である.文献(1)ではドローン自身の研究開発や技術動向を紹介したので,本稿では,ドローンの周辺技術を中心に最新研究動向について展望する(1)~(7).
ドローンの要素技術でボトルネックとなっているのは,バッテリー技術であり,飛行時間の制約と発火のリスクが課題となっている.ドローンのバッテリーには現在,正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池であるリチウムイオン電池が使用されている.代表的な材料構成では,正極にリチウム遷移金属複合酸化物,負極に炭素材料,電解質に有機溶媒などの非水電解質を用いる.リチウムポリマー電池はリチウムイオン電池の一種で,電解質にゲル状のポリマー(高分子)を用いている.そして,図1に示す「リチウム―硫黄電池」が,次世代電池としてドローンの耐久性向上や大形化に寄与すると期待されている.この電池は正極に硫黄,負極にリチウム金属化合物を使い,単位重量当りの容量であるエネルギー密度は,リチウムイオン電池の4倍以上になる.1~2年の間に実用化される可能性がある.更に将来的には固体の電解質を使う全固体電池,空気中の酸素を取り込んで化学反応するリチウム―酸素電池などが期待されている.現状ドローンの最大のボトルネックであるバッテリーが進化することで,図2に示すような物流ドローンやパッセンジャドローン(乗客用ドローン)の飛躍が保証されるものと思われる.
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