解説 IEC TC103における無線通信装置への応用を目指したRoF(Radio over Fibre)技術の標準化動向

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Vol.104 No.2 (2021/2) 目次へ

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ICT標準化解説シリーズ

 解説 

IEC TC103における無線通信装置への応用を目指したRoF(Radio over Fibre)技術の標準化動向

Standardization Activities on RoF Technologies for Radiocommunication Equipment within IEC TC 103

小川博世

小川博世 正員:フェロー 国立研究開発法人情報通信研究機構テラヘルツ研究センター

Hiroyo OGAWA, Fellow (Terahertz Technology Research Center, National Institute of Information and Communications Technology, Koganei-shi, 184-8795 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.2 pp.162-167 2021年2月

©電子情報通信学会2021

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 1980年代後半から国際マイクロ波学会等で本格的に議論が開始された光ファイバ無線(RoF)技術は,国際フォトニクス学会等においてもその重要性が認識され,両学会等で多くの論文が発表されるようになった.その後,このような異分野間の学術領域を専門的かつ効果的に議論できる場として,マイクロ波フォトニクス国際会議が1990年代後半から開始された.その後,学問の成熟度の高まり,及び通信・放送・測定機器等への応用分野の広がりに伴い,国際標準化の機運がデバイスからシステムに至る領域において2000年代頃に盛り上がってきた.本稿では,このような背景を受けてTC103がRoF技術の国際標準化作業を始めた経緯及び国際規格に関する活動状況についてその概要を紹介する.

キーワード:光ファイバ無線(RoF),マイクロ波フォトニクス(MWP),マッハツェンダ形光外部変調器

1.は じ め に

 IEC(国際電気標準会議)の国内審議団体の一つである電子情報通信学会の規格調査会においてTC103(無線通信用送信装置技術委員会)は,これまで主に無線通信送信装置の技術的条件やそれら装置に用いるデバイスのための測定法に関する国際規格を策定してきたが,2008年に日本からのRoF(光ファイバ無線)送信機に関する国際規格を検討するためのWG(作業グループ)設置提案によってWG6が設置され,RoF技術に関する標準化活動を開始することになった.本稿では,TC103 WG6の設置に対する電子情報通信学会の役割,これまでのWG6を中心とするTC103の国際規格発行に向けての活動状況等について解説する.

2.TC103 WG6の立ち上げにおける電子情報通信学会の役割

 TC103 WG6の立ち上げには,技術分野が近い電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティのマイクロ波・ミリ波フォトニクス時限研究専門委員会が重要な役割を担った.また,電子情報通信学会が主催または協賛しているマイクロ波フォトニクス(MWP)国際会議を通した人的関係が各国の国内委員会からのエキスパート登録に良い影響を与えていた.そこで本章では電子情報通信学会が光ファイバ無線の国際標準化活動に貢献した点について紹介する.なお,MWP技術はマイクロ波からミリ波に至る信号と光信号との相互作用によって構成される技術分野の総称である.一方,RoF技術はMWP技術の一つの応用技術であり,光デバイスと光ファイバを用いてマイクロ波からミリ波,更にはテラヘルツ波に至る無線信号を処理する技術分野である.

2.1 国内委員会の立ち上げ

 電子情報通信学会では,1995年に光波マイクロ波相互作用時限研究専門委員会(1997年にマイクロ波フォトニクス時限研究専門委員会に名称を変更し,その後第一種研究会として活動継続中)を設立し,それ以来マイクロ波フォトニクスの研究開発が日本でも盛んに行われるようになった.


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