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Abstract
本稿では,新型コロナウイルス感染症拡大の情勢の中で,大学等の高等教育研究機関に対して社会から新たな負託がなされ,そのことによって大学等のあるべき姿の再考が求められていることを述べる.更に,大阪大学がコロナ禍における社会課題解決に資するために設置した二つの拠点について紹介する.このような大学等の新たな姿への転換や本学の拠点の発展を実現する中で今後のコロナ新時代を迎えることにより,コロナ禍という深刻な事態に遭遇している現況を「最善観」の考え方で捉えられる日の到来を期したいものである.
キーワード:コロナ新時代,社会との共創,データ駆動形,ELSI
新型コロナウイルス感染症が我が国の社会,経済,そして大学の使命である教育研究に及ぼしている影響は甚大である.我々は,コロナ新時代(New Era of COVID-19)と呼ばれるこの難局に立ち向かわなくてはならないが,視点を変えるならば,「新しい日常(ニューノーマル)」という言葉が示すとおり,この難局は,科学技術・学術,医療制度,経済システム,会社組織,コミュニティ,個人の生活や価値観等,社会の全ての面でこれまでの常識を冷静に見直すとともに,変革すべき点を明確にする機会であると捉えることができる.
かつて人類は,14世紀のペスト禍を経験することによって,人間の本来の姿を問い直すルネサンスを起こすことができたと言われている.同様に,我々は,現在のコロナ禍が文明の転換点となり得ることを認識した上で,これを契機として,社会全般の在り方を再考し,その結果定めた方向に舵を切り直す必要がある.
翻って大学等の高等教育研究機関に目を向けてみよう.コロナ新時代においては,オンラインメディア等を利用して個々の創造活動の範囲を大学等から社会全体へと空間的に拡充することに加え,オンデマンド等のオンライン環境の柔軟な活用により,時間という壁を乗り越えることで,新しい課題に対して,社会とともにその解決に向けた方法を創造し,社会へ迅速に提供することが可能になるであろう.すなわち,大学等にコロナ新時代における新しい形の「社会との共創(Co-creation)」を醸成する時機が到来したと言える.
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