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データサイエンスにおけるデータ抽象化によるデータ理解へのアプローチ
小特集 2.
データ可視化におけるデータインタラクティビティ
Designing Data Interactivity for Visualizing Data
Abstract
データ解析においてユーザは,可視化表現とのインタラクションを介して,仮説生成や仮説検証といった知識創出のプロセスを循環的に繰り返す.このようなユーザと視覚的表現のやりとりを,我々はデータインタラクティビティと呼ぶ.本稿ではまず,事象の理解に向けた知識創出のためのデータ可視化を論じる.次に,「データトレイリング」及び「データアラインメント」という2種類のデータインタラクティビティを,それらの具現化を目的として構築したプロトタイプシステムを通して解説する.
キーワード:可視化,データインタラクティビティ,知識創造,データトレイリング,データアラインメント
データを図示することで,そのデータが示唆するところを人に分かりやすく伝えることができる.データの表現に地図描画の技法を取り入れ,折れ線グラフなどの近代グラフ表現を初めて用いたのは,18世紀末のWilliam Playfairとされる.人は,極めて少ない認知負荷で,視覚的表現間の比較や順序付けを短時間に行える.ダイアグラム(図表)による表現は,文章による表現と比して,(情報の種類によっては)認知的処理において格段に効果的であるとされる(1).
グラフ表現は,人の高い視覚認知機能を活用し,データを視覚的属性にcoding(符号化)して表現する手法である(2).今日では,高さや長さ,位置,大きさや面積,角度,色の種類や濃淡といった視覚的属性を用いて,様々な種類のグラフやダイアグラムがデータ表現に利用される(3).データの示唆するところの意味や価値を,人に最も効果的に伝えるためのグラフィックデザインは,インフォグラフィックスと呼ばれる分野として確立されつつある(4).
データサイエンスにおける大規模なデータの可視化表現においても,その原理は同様である.人の視覚認知の特性を活用し,データをビジュアルな要素で符号化する.しかしながら,次の三つの点で,伝統的なグラフやダイアグラム表現とは異なる課題がある.
第1に,対象とするデータについて,その示唆する意味や価値といったものが,あらかじめ自明ではないという課題がある.可視化された表現から正しくデータ(の一部)を読み取るということと,可視化された表現を使ってデータの(部分的な)正しさを検証するということが,相互循環的に生じる.次章で述べるように,データの理解が目的ではなく,データが示唆する対象世界の理解を目的とするデータの表現である.人に伝えるための視覚的表現ではなく,伝えるべきことを探索するための視覚的表現が要請される.
第2に,コンピュータディスプレイ上で表示される視覚的表現は,人がインタラクティブに指示する軸や視点の変更と連動する形で,極めてダイナミックに変化し得るという点である.データの視覚的要素への符号化に加えて,人が操作する対象を表す視覚的要素を,可視化表現に組み込み,連動させる必要がある.
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