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解説
情報指向ネットワークの最新動向[Ⅰ]
――ICNの仕組みと実用化に向けた課題――
Recent Trend of Information-centric Networking [Ⅰ]: Principal and Research Issue of ICN
A bstract
今後,IoTを活用したサービスの普及が期待されており,インターネット上の提供データ数が急増し,更にデータの更新頻度の増加が予想される.しかし従来のインターネットは膨大な数の高更新頻度のデータを効率的に配信することが難しい.そこでデータの名称を用いて要求パケットを送信する情報指向ネットワーク(ICN: Information-centric Networking)が注目され,国内外で精力的に研究が進められている.本稿では情報指向ネットワークの概念や特徴,歴史を解説する.更に本格的な実用化・普及のために必要な研究課題を解説し,筆者の取組み事例を紹介する.
キーワード:IoT,情報指向ネットワーク,ICN,コンテンツ,災害時通信
現在のインターネットはネットワーク層プロトコルとして1980年代に標準化されたIPを採用しており,通信相手の識別子であるIPアドレスに基づきパケットを転送するHost centricなアーキテクチャを採用している.当初のインターネットの主要用途はホストの遠隔操作や電子メールであったが,今やインターネット上を流れるトラヒックの80%以上はWebや動画像といったディジタルコンテンツの配信によって生じている.また近年,IoTが新たな産業の基盤として注目されている.このようにコンテンツ配信の増加やIoTの本格普及などにより,現在及び将来のインターネットを取り巻く環境は,現在のインターネットが設計された当時とは大きく異なり,以下に述べるような様々な問題が生じる.
IPアドレスは数字の列なので人間が記憶することが難しい.そこでホストの名前(ドメイン名)とIPアドレスとの対応関係を表としてDNS(Domain Name System)に登録し,通信に先立ちDNSに問い合わせて相手ホストのIPアドレスを解決する仕組みを用いている.またコンテンツを効率的に配信するためCDN(Content Delivery Network)が広く用いられている.CDNではネットワークの様々な場所に設置されたキャッシュサーバにコンテンツのコピーをキャッシュし,ユーザの配信要求時にDNSがユーザのローカルDNSの位置に基づき,近くに存在すると推測されるキャッシュサーバからコンテンツを配信する.しかしネットワーク事業者とは独立したCDN専業事業者がアプリケーション層で配信元をリダイレクトするため,ネットワークのトポロジーや負荷状況を考慮できず,適切なキャッシュサーバから配信することが難しい.
またIoTの普及により大量のデータがネットワークに提供され,更に頻繁にデータが更新される環境が一般化することが予想される.そのためDNSの名前登録・解決処理がスケールしなくなることが懸念される.また多くのIoTサービスでは,ユーザは欲しい情報の名称を具体的に指定することが難しく,キーワードや探索条件といった曖昧で抽象的な条件でデータを要求することが想定される.しかしDNSによる名前解決では曖昧な要求に対し配信元を解決することができない.
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