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小特集
コンピュータを用いた学習支援技術
――大学教育現場へのICT技術の活用――
編集チームリーダー 川田亮一
新型コロナウイルス感染拡大の影響で,世界中で学校が閉鎖になり,従来の授業からオンライン授業への移行など,教育分野においてコンピュータやICT技術の積極的な活用が注目されている.このような背景から,本小特集ではコンピュータやICT技術を用いた学習支援技術について,開発者側,利用者側,制度設計者側の各視点から,紹介を行う.
まず第1章では総論として,新型コロナウイルス禍が可視化したオンライン学習の限界と可能性について,本会の教育工学研究専門委員会委員長を2020年度まで務められた茨城大学の鈴木氏に論じて頂く.
第2章では,コンピュータを用いた学習支援環境の整備をする開発者側の視点から,4件の記事を御執筆頂いた.2-1では「LMS20年の歴史と展望――京都大学でのフルオンライン授業対応を踏まえて――」と題して,京都大学の梶田氏から,Learning Management System(LMS)の20年にわたる歴史とその展望を,京都大学におけるフルオンライン授業への対応を踏まえながら述べて頂く.2-2では,「学習支援サービスの運用とオンデマンド型を中心としたオンライン授業への展開――名古屋大学における事例――」と題して,名古屋大学の戸田氏らから,学習支援システムNUCTを活用したオンデマンド型のオンライン授業の動向及び今後の課題について御説明頂く.また2-3では,「学習者主体型教育を実現する学習分析基盤」と題して,九州大学の島田氏から,ディジタル学習環境において蓄積される大量のログを活用して教育や学習の改善を支援する技術について御紹介頂く.更に2-4では,「仮想化技術を用いたネットワーク演習環境」と題して,名古屋工業大学の立岩氏らから,金銭的・人的リソースが限定される場合でも有効で,環境構築の柔軟性・評価の容易さでも実機に比べアドバンテージのある,仮想環境を使ったネットワーク演習について解説頂く.
続いて第3章では,コンピュータを用いた学習支援技術を活用する利用者側の視点から,3件の記事を御執筆頂いた.3-1では「ICT技術を活用した学習環境デザイン」と題して東京大学の山内氏から,ICTを利用した学習環境の様々な事例についてそのメリットと今後の在り方を御提案頂く.3-2では「教育環境におけるデータを活用した学習コミュニティ分析手法」と題して,九州大学の多川氏から,学習者が周囲の環境や他の学習者とどのように関わり学習を進めるのかというプロセスを観察し分析するための,学習支援環境の履歴情報やセンサデータの活用法について御紹介頂く.3-3では,「有意味学習を支援するための知識構造可視化システム」と題し,英ダラム大学の王氏らに,学習者の電子教科書の利用履歴等の様々な情報を統合しその人の既存知識の枠組みをマップ構造で表すことで学習効果を高めることのできるシステムについて,御説明頂く.
最後に第4章では,制度設計者側の視点から,2018年度の著作権法改正によって創設されコロナ禍で昨年4月に緊急的かつ特例的に早期実施された「授業目的公衆送信補償金制度」について,千葉大学の竹内氏に,制度導入の背景や基本的考え方,著作物を教育や学習に活用するためのより良い環境の構築に向けて今後更に検討すべき事項等について,解説を頂く.
コロナ禍をきっかけに,大学に限らず教育現場でのICT活用が急激に進んだ.そのメリット・デメリットをよく見定めた上で,メリットをいかに伸ばし,デメリットをいかに抑えるかを検討していくことは,正に世の中から本会に期待されていることであろう.本小特集がその検討の一助となれば幸いである.
最後に,御多忙の中,貴重な原稿を御執筆頂いた皆様,編集チームの皆様,学会事務局の皆様に深く感謝申し上げます.
小特集編集チーム
川田 亮一 永田 真斗 櫻井 祐子 一木 麻乃 江島 將高 楠田 佳緒 齊藤翔一郎 髙橋 桂太 多屋 優人 近野 恵 中井 満 中島 諒 中田 秀基 南里 豪志 野中 誉子 野村 晶代 比嘉 恭太 古本 啓祐 矢野 敦仁 山本 博章
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