解説 現場主導DXを実現する業務ナビゲーション技術

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 解説 

現場主導DXを実現する業務ナビゲーション技術

Business Navigation Technologies for Field-initiated Digital Transformation

大石晴夫

大石晴夫 正員 日本電信電話株式会社NTTアクセスサービスシステム研究所

Haruo OISHI, Member (Access Network Service System Laboratories, NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION, Yokosuka-shi, 239-0847 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.104 No.8 pp.920-926 2021年8月

©電子情報通信学会2021

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 新サービス提供までの開発期間が短縮されたことや業務ルールが複雑化してきたことにより,業務システムの構築・更改コストが増大しており,企業や行政にとっての大きな課題となっている.更に,“働き方改革”に適応して作業やルールを柔軟にした業務環境の実現が重要となっている.業務システムによる業務の効率化が一般的となる中で,DX(Digital Transformation,ディジタルトランスフォーメーション,ディジタル変革)の推進が加速している.業務システムのDXは,システム基幹DXと現場主導DXに分類でき,互いに補完関係にある.本稿では,現場主導DXを実現する業務ナビゲーション技術として,RPA(Robotic Process Automation)系技術(特に日本発RPAであるUMS)とUI(User Interface)サポート系技術を紹介する.更に,これらの技術について今後の展望を述べる.

キーワード:DX,業務ナビゲーション技術,RPA,UI拡張,‘ひと’と‘システム’の協働

1.DXを支える技術の背景とアプローチ

1.1 背景

 情報通信システム技術の発展により,人による業務の遂行を支援する業務システムを用いて,サービスを提供し業務の効率化を図ることは,今や多くの分野で一般的となっている.高齢化や少子化による労働力の減少やワークライフバランスの推進など,社会環境が変化する中で,業務システムの利用によって,生産性の向上はもちろん,高付加価値で創造的な業務を行うことが求められている.なおここでの業務とはあらゆる分野における事業活動のことで,例えば,商品の受注処理などである.また業務システムを用いて業務を行うとは,例えば,受発注管理システムを利用して業務フロー処理を行うというようなことである.

 業務システムは,作業量と繰返しが多い定型業務を中心に適用され,高頻度な業務のルールに基づいて設計・構築される.一方,例外的で低頻度な業務は,業務システム化の対象から外され,業務オペレータ(作業者)による人手で行われることが多い.業務システムを取り巻く環境は,近年大きく変化している.例えば,新しいサービスを開発し提供するまでのサイクルが非常に短期化していること,業務ルールが複雑化してきたことに加えてその改革も迫られていること,多数の業務システムを連携するためシステムが大規模化していることなどが挙げられる.その結果,業務システムの構築・更改コストが増大し,それらを構築して利用する企業・行政にとっての大きな課題となっている.更に,“働き方改革”の広まりにより,作業・ルールを柔軟化して,それに基づく業務環境を実現することが求められている.

 一方で近年は,DX(Digital Transformation,ディジタルトランスフォーメーション,ディジタル変革)の推進が求められている(1).その際,業務システムを構築・更改することでDXを進めるだけでなく,日々の業務を行っている作業者を支援して業務の効率化を図る動きも広がっている.

 ところで,通信事業者に目を向けると,各種通信サービスを提供するに当たっては,通信設備等の運用管理,顧客管理,料金管理など多様な業務があり,通常,OpS(オペレーションサポートシステム)を用いて業務を行っている.今でこそ,あらゆる分野の業務で,業務システムは欠かせないものとなっているが,例えば当社では,インターネット普及のはるか以前の電話時代の1960年代から料金サービスオーダ管理や通信ネットワークシステムの管理のためにOpSを早期に導入している.そういう状況にあったため,OpSとその利用における課題が早くから顕在化していた.つまり,業務の遂行を“いかに効率的にしていくか?”が重要な課題となっていた.効率的な業務の遂行に向けて,作業量を減らす方向,業務内容を簡易化する方向の2方向を示す(図1).


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