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        <title>解説　VRにおける身体変容と精神疾患治療の動向</title>
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<div class="header">
<table class="header-in" align="center" valign="middle">
<tr>
<td class="left-table">
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<p class="head-toku"><span class="gext Solid-blue lime-bg"> 解説 </span></p>
<p class="title-ja lft">VRにおける<span class="gext not-separates">身体変容と</span><span class="gext not-separates">精神疾患</span><span class="gext not-separates">治療の</span><span class="gext not-separates">動向</span></p>
<p class="title-en">The Trend for Body Transformation and Psychiatric Treatment in Virtual Reality</p>
<p class="title_author">神谷尚保</p>
<div class="gext author_detail5"><p class="li-1em">神谷尚保　正員　(株)KDDI総合研究所イノベーション協創グループ</p>

<p>Naoyasu KAMIYA, Member (Innovation Co-creation Laboratory, KDDI Research, Inc., Fujimino-shi, 356-8502 Japan).</p>
<p>電子情報通信学会誌　Vol.104 No.8 pp.913-919 2021年8月</p>
<p>©電子情報通信学会2021</p>
</div>
<div class="gext abstract"><p><strong class="purple font2em en">A</strong> <strong class="en font1em6 red">bstract</strong></p>
<p>　VR空間で別の身体に変容することで，自身の感情や認識，行動が変わるという現象についての研究が進んでいる．例えば，白人が黒人のアバタを使うことで差別意識が軽減される，子供のアバタを使うことで物体の大きさを過大評価して態度が幼くなる，スーパーヒーローになって人助けをした後に利他的行動を取りやすくなる，といった事例が報告されている．本稿では，これらのVRを活用した身体変容の研究事例を紹介するとともに，近年，活用が進みつつあるVRを用いた精神疾患治療の事例を紹介し，VRの身体変容を精神疾患治療に適用することの可能性について解説する．</p>
<p><strong class="m-gothic">キーワード</strong>：VR，身体所有感，身体変容，精神疾病治療</p>
</div>
<div class="wrapper level3" id="h_2e0000_2e1_EF_BC_8E_E3_81_AF_E3_80_80_E3_81_98_E3_80_80_E3_82_81_E3_80_80_E3_81_AB"><h1>1．は　じ　め　に</h1>
<p>　人間は自分の身体が正に自分に属するものだという感覚を持っており，身体所有感と呼ばれている．一方で，一定の条件下では，自分の身体ではないはずの対象にも身体所有感が生起し，あたかも自分の身体であるかのように感じられることが示されている．</p>
<p>　例えばBotvinickらは，仕切り板などを用いて自分の手を視界から隠す代わりに，目の前にゴムの手（ラバーハンド）を置き，自分の手とラバーハンドを同時に筆でなぞられていると，ラバーハンドがあたかも自分自身の手であるかのように感じられるラバーハンド錯覚を報告している<a href="#u_2e0000_2eref01"><sup>(1)</sup></a>．古典的なラバーハンド錯覚は，筆でなぞることによる視触覚間の感覚同期に起因するものである．一方で，VR（Virtual Reality，仮想現実）空間で自己の運動に同期して動くアバタハンドに対しても，視覚運動間の同期によって身体所有感が生起することが示されている<a href="#u_2e0000_2eref02"><sup>(2)</sup></a>．また，Maselliらは，手だけでなく全身アバタに対しても身体所有感が生起することを報告している<a href="#u_2e0000_2eref03"><sup>(3)</sup></a>．このように，VR空間内において，現実空間とは異なる身体像を自分の身体として知覚することが期待できる．</p>
<p>　外界の対象に身体が変容すると，知覚的な影響だけにとどまらず，自身の感情や認識，行動も変容することが示されている．例えば，太鼓の演奏を習うVRシステムにおいて，自らのアバタが，かっちりとしたスーツに身を包んだ白人男性であるときに比べて，カジュアルな服装をしたアフロヘアの黒人男性であるときの方が，腕の振りが大きくなることを示し，自らが何者であるかという認識が行動やパフォーマンスに大きな影響を与えることが示唆されている<a href="#u_2e0000_2eref04"><sup>(4)</sup></a>．</p>
<p>　他にも，VRでスーパーヒーローになり，積極的に人を助けることをした被験者は事後に利他的行動を取りやすくなる<a href="#u_2e0000_2eref05"><sup>(5)</sup></a>，白人が黒人のアバタを使うことで差別意識が軽減される<a href="#u_2e0000_2eref06"><sup>(6)</sup></a>，子供のアバタを使うことで物体の大きさを過大評価し，態度が幼くなる<a href="#u_2e0000_2eref07"><sup>(7)</sup></a>，自分自身を空中から見下ろす幽体離脱体験をすることで，意識あるいは魂が肉体とは別に存在し得るという感覚を持ち，死の恐怖が軽減される<a href="#u_2e0000_2eref08"><sup>(8)</sup></a>，嫌がらせを受ける女性の体験をすることで，女性に対する攻撃的行為に対して罪の意識を感じやすくなる<a href="#u_2e0000_2eref09"><sup>(9)</sup></a>，等，VRによる身体変容が人の感情や認識，行動に影響を与えることが様々に検証され始めている．</p>
<p>　本稿では，これらのVRを活用した身体変容の研究事例を紹介するとともに，近年，活用が進みつつあるVRを用いた精神疾患治療の事例を紹介し，VRの身体変容を精神疾患治療に適用することの可能性について解説する．</p>
<p class="line-gap"> </p>
</div>
<div class="wrapper level3" id="h_2e0000_2e2_EF_BC_8EVR_E8_BA_AB_E4_BD_93_E5_A4_89_E5_AE_B9_E3_81_AB_E3_82_88_E3_82_8B_E6_84_9F_E6_83_85_E3_82_84_E8_AA_8D_E8_AD_98_EF_BC_8C_E8_A1_8C_E5_8B_95_E3_81_AE_E5_A4_89_E5_AE_B9"><h1 class="long">2．VR身体変容による感情や認識，行動の変容</h1>
<p>　<strong class="m-gothic">1．</strong>に示した文献<a href="#u_2e0000_2eref04">(４)</a>～<a href="#u_2e0000_2eref09">(９)</a>の研究事例に関する評価を整理することで，VR空間での身体変容により，どの程度の感情や認識，行動の変容効果が得られるのか考察する．</p>
<p>　研究事例：文献<a href="#u_2e0000_2eref04">(４)</a>の太鼓演奏では，36人の白人（うち男性17人）を被験者として，アンケート評価と動作データ評価を行っている．この評価では，アバタを「カジュアルな服装をしたアフロヘアの黒人男性にしたグループ」（19人）と，「かっちりとしたスーツに身を包んだ白人男性にしたグループ」（17人）に分け，4分間白人の手のみを表示して太鼓を演奏した後に，4分間それぞれのグループのアバタを表示して再度演奏を行い，どのように差分が生じたか評価している．アンケート評価では，身体所有感や演奏のしやすさを問う八つの質問に対して，7段階で評価している．動作データ評価では，上半身に36個のセンサを付け，1秒間隔で計90秒（白人の手のみを表示して演奏スタートしてから30秒，各グループのアバタを表示して演奏スタートしてから30秒，落ち着いている状態で30秒）のデータ計測を行っている．</p>
<p>　<a href="index.html#u_2e0000_2efig-1">図1</a>は表示するアバタのイメージである．<a href="index.html#u_2e0000_2efig-2">図2</a>は，アバタの手を見下ろす視点，及びアバタの全身を鏡越しに見ている視点で，それぞれ太鼓を演奏したときに身体所有感の強さを問う質問と，動作データの評価結果との関係性を示すグラフである．横軸はアンケートの7段階評価の結果であり，7がアバタを自分の身体だと最も強く感じていることを示している．縦軸は白人の手のみを表示したベースラインからの動作ピークの変化比率を表し，1を超えると動作が激しくなったことを示している．このグラフでは，被験者全員の評価結果をプロットしている．結果として，アバタの手を見下ろす視点，アバタの全身を鏡越しに見ている視点，のどちらでも同じ傾向があり，黒人アフロ男性アバタの方が，身体所有感のアンケートスコアが高くなり，動作も激しくなっていることが分かる．このように個人差は大きいものの，表示するアバタが演奏の仕方に影響を与えていると言える．</p>
<div id="u_2e0000_2efig-1"><div class="gext fig" id="fig_1"><p><img alt="図1　太鼓演奏の研究事例におけるアバタイメージ" src="images/fig_1.png"/></p>
</div>
</div>
<div id="u_2e0000_2efig-2"><div class="gext fig" id="fig_2"><p><img alt="図2　太鼓演奏の研究事例における評価結果" src="images/fig_2.png"/></p>
</div>
</div>
<p>　研究事例：文献<a href="#u_2e0000_2eref05">(５)</a>のヒーロー体験では，60人（うち男性30人）を被験者として，行動評価を行っている．この評価では，被験者が行うVR体験を「震災後にスーパーヒーローになって飛行し，糖尿病患者の子供のためにインスリンを届ける人助け体験」（16人），「ヘリコプタの乗客になって飛行し，前記と同じ人助け体験」（17人），「スーパーヒーローになって飛行し，都市の街並みを観光する体験」（14人），「ヘリコプタの乗客になって飛行し，前記と同じ観光体験」（13人）の四つのグループに分けて，VR体験後の利他的行動を評価している．利他的行動は，被験者が椅子に座っているときに他の人がペン15本を床に落としてしまうというアクシデントを起こし，その際にペンを拾い始めるまでの秒数と，拾ったペンの本数，を四つのグループで比較評価している（<a href="index.html#u_2e0000_2efig-3">図3</a>）．</p>
<div id="u_2e0000_2efig-3"><div class="gext fig" id="fig_3"><p><img alt="図3　ヒーロー体験の研究事例における行動評価方法" src="images/fig_3.png"/></p>
</div>
</div>
<p>　<a href="index.html#u_2e0000_2etable-1">表1</a>では，四つのグループの平均と標準偏差を示している．スーパーヒーローになって飛行体験をすると，ヘリコプタの乗客になっての飛行体験よりも明らかにペンを拾い始めるまでの秒数が短くなり，拾ったペンの本数も増えている．ヘリコプタの乗客になって飛行体験をしたうち6人は，ペンを拾わなかったというデータも出ている．一方で，人を助ける体験と観光体験では有意な差は出ておらず，何をしたかという体験よりも自分が何者と感じるかの体験が行動に影響を及ぼすと考えられている．なお，この評価では映像酔いによる生体影響の主観評価であるSSQ（Simulator Sickness Questionnaire）も実施し，映像酔いが行動に差分を与えることがないことを確認している．</p>
<div id="u_2e0000_2etable-1"><div class="gext table" id="table_1"><p><img alt="表1　ヒーロー体験の研究事例における評価結果" src="images/table_1.svg"/></p>
</div>
</div>
<p>　研究事例：文献<a href="#u_2e0000_2eref06">(６)</a>の黒人体験では，潜在的態度を測定する手法であるIAT（Implicit Association Test）を用いて，VR空間内で肌の色の違うアバタを使う場合と使わない場合で，かつ複数回の経験を行うことで人種的な偏見意識が減少する効果はどれぐらい継続し得るのか評価している．この研究事例では，VR体験をしてから1週間後にIATを計測することで，身体変容の効果が継続するか評価している．評価では59人の女性被験者を対象とし，アバタの肌の色（白人or黒人）と体験回数（1 or 2 or 3）の組合せを変更した6グループ（各グループ10人）で肌の色に対する偏見のIATを計測している．</p>
<p>　この評価では，VR体験の1週間前に被験者に対しIATを測定し，0.59±0.037（平均±標準偏差）というデータを得ている（IATスコア0以上は肌の色に対し，偏見を持っていることを示している）．この事前測定に対し，VR体験の1週間後に再度IATを計測した結果，アバタが白人のグループ（30人）ではIATが平均0.60±0.055と変化がほとんどないことに対し，黒人のグループ（29人）では0.36±0.059と，黒人に対する偏見が減少するという結果が得られている．なお，体験回数（1，2，3）による違いは，2回，3回，1回の順にIATの減少が大きくなっており，繰返しの効果は若干不明瞭である．この評価から，身体変容の効果が少なくとも1週間後も継続することが示されている．一方で，より長期間の継続性については，更なる評価が必要である．</p>
<p>　研究事例：文献<a href="#u_2e0000_2eref07">(７)</a>の子供体験では，30人（うち男性13人）を被験者として，同じ性別の4歳の子供（身長91.5cm）の体験と，子供と同じ身長の大人の身体の体験の2種類の感じ方の違いについてアンケート評価を行っている．</p>
<p>　この結果，双方の体験で身体所有感の強さに差は見られなかった．しかし，仮想現実上の物体の大きさ知覚に関しては，4歳の子供体験の方がより多く過大評価が発生していた．更に，IATを用いて大人と子供のどちらの考えに近いか評価を行ったところ，4歳の子供体験のみで子供の考えに近くなることが示されている．なお，仮想現実と現実の身体の動きを同期させずに身体所有感を排除して実験を行ったところ，前記の実験で得られた条件間の差は全てなくなっている．この結果，身体所有感を誘発した場合，身体所有感を認識した身体に応じて，知覚や恐らく行動までもが変容すると結論付けている．</p>
<p>　研究事例：文献<a href="#u_2e0000_2eref08">(８)</a>の幽体離脱体験では，32人の女性被験者を対象として，アンケート評価を行っている．この評価では，「被験者の身体と同じ位置にバーチャルな身体もあることが鏡越しの視点で分かるところからVR体験がスタートし，バーチャルなお手玉をしていると，視線のみが徐々に上方に移動して，最後はバーチャルな自分の身体がお手玉をしていることを見下ろす動画像」（身体漂流体験）のグループ（16人）と，「身体漂流体験と同じようにバーチャルなお手玉をしていると，視線の移動に伴って，バーチャルなボールも一緒に上方に移動する動画像」（身体離脱体験）のグループ（16人）で，「死の恐怖」に関する七つの質問（各5段階評価，5が恐怖が最も強い）に対して，差分を評価している（<a href="index.html#u_2e0000_2efig-4">図4</a>）．</p>
<div id="u_2e0000_2efig-4"><div class="gext fig" id="fig_4"><p><img alt="図4　幽体離脱体験の研究事例におけるVR体験方法" src="images/fig_4.png"/></p>
</div>
</div>
<p>　この結果，身体離脱体験のグループの方が，七つの質問全てにおいて死の恐怖の度合いが少ないという結果が得られている（<a href="index.html#u_2e0000_2efig-5">図5</a>）．この結果の理由として，「身体離脱体験」グループではバーチャルな身体を離れても活動が継続したため，「肉体が滅んでも何らかの活動が可能である」という思いを実感でき，死の恐怖が軽減したと考察されている．</p>
<div id="u_2e0000_2efig-5"><div class="gext fig" id="fig_5"><p><img alt="図5　幽体離脱体験の研究事例における評価結果" src="images/fig_5.png"/></p>
</div>
</div>
<p>　研究事例：文献<a href="#u_2e0000_2eref09">(９)</a>の女性攻撃体験では，60人の男性被験者を対象として，(１)バーで男性グループが雑談後に女性をしつこく誘うVR体験を男性グループの一員として体験（被験者20人），(２)女性側視点で(１)と同じVR体験（被験者20人），(３)登場人物が存在しないバーにいるVR体験（被験者20人），を行った1週間後に，ミルグラムの服従実験（椅子に拘束された女性が正しい選択肢を選ばなかった場合，仲間の要請で被験者が徐々に電圧が上がる電気ショックを与える体験）をVR上で実施し，電気ショックを与えた回数を(１)～(３)のグループで比較している．</p>
<p>　この結果，<a href="index.html#u_2e0000_2efig-6">図6</a>に示すように，グループ(２)は，グループ(１)と比較して，電気ショックを与えた回数が半減し，グループ(３)は，グループ(１)，(２)の間の電気ショック回数となっており，女性との心理的距離の近さが影響していると考察している．</p>
<div id="u_2e0000_2efig-6"><div class="gext fig" id="fig_6"><p><img alt="図6　女性攻撃体験の研究事例における評価結果" src="images/fig_6.png"/></p>
</div>
</div>
<p>　以上の研究事例をまとめた表を<a href="index.html#u_2e0000_2etable-2">表2</a>に示す．全ての研究事例において，被験者をグループ分けすることでグループ間の差を比較している．研究事例を統合すると，個人差はあるものの，身体変容により，自身の感情や認識，行動も変わることがある程度示せていると言える．</p>
<div id="u_2e0000_2etable-2"><div class="gext table" id="table_2"><p><img alt="表2　研究事例のまとめ" src="images/table_2.svg"/></p>
</div>
</div>
<p class="line-gap"> </p>
</div>
<div class="wrapper level3" id="h_2e0000_2e3_EF_BC_8E_E7_B2_BE_E7_A5_9E_E7_96_BE_E6_82_A3_E6_B2_BB_E7_99_82_E3_81_A7_E6_B4_BB_E7_94_A8_E3_81_8C_E9_80_B2_E3_81_BF_E3_81_A4_E3_81_A4_E3_81_82_E3_82_8BVR"><h1 class="long">3．精神疾患治療で活用が進みつつあるVR</h1>
<p>　これまでに，VRを活用した精神疾患治療については数多くの研究が行われている．オックスフォード大学の精神科医たちは，英国の国民保健サービス（NHS）とバルセロナ大学の研究者たちと共同で，2016年末までに発表されたVRを使った精神疾患治療に関する研究285件を分析し，VR治療の効果や将来性をまとめている<a href="#u_2e0000_2eref10"><sup>(10)</sup></a>．285件の研究のうち，192件は不安感，44件は統合失調症，22件は依存症や薬物中毒といった物質関連障害，18件は摂食障害に関するものである．分析の結果，いまだ汎用的でないものの，特に不安感や摂食障害に関しては，VR技術を臨床試験や民間療法として利用できるとしている．不安感の中で最も研究されている分野は恐怖症である．例えば，VRが飛行機恐怖症や高所恐怖症の治療に使われたケースがある．摂食障害に関しては，VRを使って患者に程度の異なる幻覚を与えることで治療に応用できる見込みがあると述べている．</p>
<p>　また，米国精神医学会も，VRは幾つかの点で現実世界での治療を上回る効果を持っていると指摘している<a href="#u_2e0000_2eref11"><sup>(11)</sup></a>．例えば，環境をコントロールしたり，特定のシナリオを繰り返したり，シナリオを各個人に合わせたりといったことである．これにより，VRでは治療を自動化でき，治療費が安くなることも示唆されている．</p>
<p>　最近では，日本国内での活用も進みつつある．順天堂大とパルス社は，慢性の神経痛や入院時の不安を緩和する「うららかVR」を2019年6月から提供している<a href="#u_2e0000_2eref12"><sup>(12)</sup></a>．ジョリーグッド社が開発する，うつ病患者に向けた認知行動療法VRは，2020年12月に帝人ファーマ×アドライトアクセラレータープログラムで「Home Healthcare Award」を受賞している<a href="#u_2e0000_2eref13"><sup>(13)</sup></a>．魔法アプリ社は，不安症に対するVR曝露療法ソフトウェア「NaReRu」を開発し，2021年1月時点で全国8か所のクリニックに導入している<a href="#u_2e0000_2eref14"><sup>(14)</sup></a>．</p>
<p class="line-gap"> </p>
</div>
<div class="wrapper level3" id="h_2e0000_2e4_EF_BC_8EVR_E8_BA_AB_E4_BD_93_E5_A4_89_E5_AE_B9_E3_81_AE_E7_B2_BE_E7_A5_9E_E7_96_BE_E6_82_A3_E6_B2_BB_E7_99_82_E3_81_B8_E3_81_AE_E9_81_A9_E7_94_A8_E5_8F_AF_E8_83_BD_E6_80_A7"><h1 class="long">4．VR身体変容の精神疾患治療への適用可能性</h1>
<p>　身体所有感の条件やそれにより，どのように感情や認識，行動が変わるかということを理解できれば，精神疾患治療の効果をより高めることが期待できる．</p>
<p>　身体所有感の条件に関して，時空間的な同期が重要であり，バーチャルハンドでは，遅延が150ms以下，実際と仮想手との角度のずれが15度以下の場合に身体所有感が生起することが示されている<a href="#u_2e0000_2eref15"><sup>(15)</sup></a>．その他，身体所有感が生起をする上での制約について，対象となる身体の形状，肌の質感，空間的配置，解剖学構造の四つの要素に分類されて検討が行われている<a href="#u_2e0000_2eref16"><sup>(16)</sup></a><sup>,</sup><a href="#u_2e0000_2eref17"><sup>(17)</sup></a>．また，同一の身体を用いた場合にも，生起する身体所有感の強さは，性差があることも確認されている<a href="#u_2e0000_2eref18"><sup>(18)</sup></a>．</p>
<p>　身体所有感を得たことによって感情や認識，行動が変わるメカニズムとして，VRにおけるアバタへの没入が，自らの身体において慣れ親しんだ思考の形態から被験者を一旦離れさせ，この身体であれば何を考え何を感じ得るのかを無意識のうちに想像させることで，普段はアクセスすることのないメンタルリソースへのアクセスを促し，感情や認識，行動の変容をもたらすと考察されている<a href="#u_2e0000_2eref19"><sup>(19)</sup></a>．</p>
<p>　また，自身がその対象を動かしているという感覚である行為主体感を強く生起させることが，感情や認識，行動の変容に重要な役割を果たしていると考えられている<a href="#u_2e0000_2eref20"><sup>(20)</sup></a>．行為主体感には行為の結果を予測する順モデルが関わっていると考えられており，「事前に想定する行為の結果の予測」と「実際の行為の結果」の整合性がとれた際に行為主体感が生じる．簗瀬らは，ゲーム中のキャラクタの動作に補正を加えた場合にどの程度の補正まで行為主体感を維持できるのかを確認しており，30%程度の動作の補正では，ほとんど違和感が生じないこと，徐々に補正を強くすれば動作に補正が加わっていても行為主体感が維持できることを示している<a href="#u_2e0000_2eref21"><sup>(21)</sup></a>．</p>
<p>　したがって，精神疾患治療に関するVRソフトの設計では，身体所有感が生起する条件を満たした上で，アバタの行動が自分と強く関連付けられるようなフィードバックを実現することが重要である．VRにおける身体変容は，まだ未解明の部分も多いが，今後，研究開発が進展し，その効果をうまくVRソフトの設計に取り入れることで，精神疾患治療の発展が期待できる．</p>
<p class="line-gap"> </p>
</div>
<div class="wrapper level3" id="h_2e0000_2e5_EF_BC_8E_E3_82_80_E3_80_80_E3_80_80_E3_81_99_E3_80_80_E3_80_80_E3_81_B3"><h1>5．む　　す　　び</h1>
<p>　本稿では，VRを活用した身体変容の研究事例を紹介するとともに，近年，活用が進みつつあるVRを用いた精神疾患治療の事例を紹介し，VRの身体変容を精神疾患治療に適用することの可能性について解説した．</p>
<p class="line-gap"> </p>
</div>
<div class="wrapper level3" id="h_2e0000_2e_E6_96_87_E3_80_80_E3_80_80_E3_80_80_E3_80_80_E3_80_80_E7_8C_AE"><h1>文　　　　　献</h1>
<div class="gext references"><p class="li" id="u_2e0000_2eref01"><span class="gext listmark">(１) </span>M. Botvinick and J. Cohen, “Rubber hands ‘feel’ touch that eyes see,” Nature, vol.391, no.6669, p.756, Feb. 1998.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref02"><span class="gext listmark">(２) </span>M.V. Sanchez-Vives, B. Spanlang, A. Frisoli, M. Bergamasco, and M. Slater, “Virtual hand illusion induced by visuomotor correlations,” PLOS ONE, vol.5, no.4, e10381, April 2010.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref03"><span class="gext listmark">(３) </span>A. Maselli and M. Slater, “The building blocks of the full body ownership illusion,” Frontiers in Human Neuroscience, vol.5, art. 83, March 2013.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref04"><span class="gext listmark">(４) </span>K. Kilteni, I. Bergstrom, and M. Slater, “Drumming in immersive virtual reality: the body shapes the way we play,” IEEE Trans. Vis. Comput. Graphics, vol.19, no.4, pp.597-605, April 2013.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref05"><span class="gext listmark">(５) </span>R.S. Rosenberg, S.L. Baughman, and J.N. Bailenson, “Virtual superheroes: using superpowers in virtual reality to encourage prosocial behavior,” PLOS ONE, vol.8, no.1, e55003, Jan. 2013.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref06"><span class="gext listmark">(６) </span>D. Banakou, P.D. Hanumanthu, and M. Slater, “Virtual embodiment of white people in a black virtual body leads to a sustained reduction in their implicit racial bias,” Frontiers Human Neuroscience, vol.10, art. 601, Nov. 2016.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref07"><span class="gext listmark">(７) </span>D. Banakoua, R. Grotena, and M. Slater, “Illusory ownership of a virtual child body causes overestimation of object sizes and implicit attitude changes,” Proc. National Academy of Sciences, vol.110, no.31, July 2013.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref08"><span class="gext listmark">(８) </span>P. Bourdin, I. Barberia, R. Oliva, and M. Slater, “A virtual out-of-body experience reduces fear of death,” PLOS ONE, vol.12, no.1, e0169343, Jan. 2017.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref09"><span class="gext listmark">(９) </span>S. Neyret, X. Navarro, A. Beacco, R. Oliva, P. Bourdin, J. Valenzuela, I. Barberia, and M. Slater, “An embodied perspective as a victim of sexual harassment in virtual reality reduces action conformity in a later milgram obedience scenario,” Scientific Reports, vol.10, no.6207, April 2020.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref10"><span class="gext listmark">(10) </span>D. Freeman, S. Reeve, A. Robinson, E. Anke, D. Clark, B. Spanlang, and M. Slater, “Virtual reality in the assessment, understanding, and treatment of mental health disorders,” Psychological Medicine, vol.47 no.14, pp.2393-2400, March 2017.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref11"><span class="gext listmark">(11) </span>American Psychiatric Association, “Virtual reality: expanding use in mental health treatment,” 2017.<br/><a class="wrap" href="https://www.psychiatry.org/news-room/apa-blogs/apa-blog/2017/02/virtual-reality-expanding-use-in-mental-health-treatment">https://www.psychiatry.org/news-room/apa-blogs/apa-blog/2017/02/virtual-reality-expanding-use-in-mental-health-treatment</a></p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref12"><span class="gext listmark">(12) </span>順天堂大，パルス社，“うららかVR，”2019．<br/><a class="wrap" href="https://uraraka-vr.care">https://uraraka-vr.care</a></p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref13"><span class="gext listmark">(13) </span>ジョリーグッド社，“VRDTx治療VR，”2019．<br/><a class="wrap" href="https://jollygood.co.jp/vrdtx">https://jollygood.co.jp/vrdtx</a></p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref14"><span class="gext listmark">(14) </span>魔法アプリ社，“NaReRu,” 2021．<br/><a class="wrap" href="https://www.magiappltd.com/nareru">https://www.magiappltd.com/nareru</a></p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref15"><span class="gext listmark">(15) </span>N. Franck, C. Farrer, N. Georgieff, M.M. Cardine, J. Daléry, T. d’Amato, and M. Jeannerod, “Defective recognition of one’s own actions in patients with schizophrenia,” American Journal of Psychiatry, no.158, pp.454-459, April 2001.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref16"><span class="gext listmark">(16) </span>K. Kilteni, R. Groten, and M. Slater, “The sense of embodiment in virtual reality,” Presence Teleoperators &amp; Virtual Environments, vol.21, no.4, pp.373-387, Nov. 2012.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref17"><span class="gext listmark">(17) </span>K. Kilteni, A. Maselli, K.P. Kording, and M. Slater, “Over my fake body: body ownership illusions for studying the multisensory basis of own-body perception,” Frontiers in Human Neuroscience, vol.9, no.141, March 2015.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref18"><span class="gext listmark">(18) </span>V. Schwind, P. Knierim, C. Tasci, P. Franczak, N. Haas, and N. Henze, “‘These are not my hands!’: effect of gender on the perception of avatar hands in virtual reality,” Proc. 2017 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, pp.1577-1588, Denver, USA, May 2017.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref19"><span class="gext listmark">(19) </span>S.A. Osimo, R. Pizarro, B. Spanlang, and M. Slater, “Conversations between self and self as Sigmund Freud-A virtual body ownership paradigm for self counselling,” Scientific Reports, no.5: 13899, Oct. 2015.</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref20"><span class="gext listmark">(20) </span>鳴海拓志，“ゴーストエンジニアリング：身体変容による認知拡張の活用に向けて，”認知科学，vol.26, no.1, pp.14-29, March 2019．</p>
<p class="li" id="u_2e0000_2eref21"><span class="gext listmark">(21) </span>簗瀬洋平，鳴海拓志，“誰でも神プレイできるジャンプアクションゲーム，”日本バーチャルリアリティ学会論文誌，vol.21, no.3, pp.415-422, Oct. 2016．</p>
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<p class="date">（2021年1月15日受付　<span class="gext not-separates">2021年2月1日最終受付） </span></p>
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<div class="gext authors"><div class="gext author"><div class="gext fig"><p><img alt="神谷尚保" src="images/fig_7.png"/></p>
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<div class="gext author_text"><p><span class="gext author_name"><ruby>神<rp>(</rp><rt>かみ</rt><rp>)</rp></ruby><ruby>谷<rp>(</rp><rt>や</rt><rp>)</rp></ruby>　<ruby>尚<rp>(</rp><rt>なお</rt><rp>)</rp></ruby><ruby>保<rp>(</rp><rt>やす</rt><rp>)</rp></ruby></span><span class="gext member">（正員）</span></p>
<p>　2007東京工科大・コンピュータサイエンス卒．2009慶大大学院政策・メディア研究科修士課程了．同年KDDI株式会社入社．2010同研究科博士課程入学．2011退学．同年から(株)KDDI研究所（現(株)KDDI総合研究所）にて，光アクセス，無線通信の研究に従事．現在，同社で5G，xR，新規ビジネス評価基盤，等の研究や技術調査を担当．</p>
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