小特集 機械学習を活用したネットワーク監視・予測・制御技術の最新動向 小特集編集にあたって

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Vol.105 No.10 (2022/10) 目次へ

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小特集

機械学習を活用したネットワーク監視・予測・制御技術の最新動向

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 田中和樹

 近年,AI(Artificial Intelligence)が大きな注目を集め,様々な分野でAI活用をテーマとした研究開発が進んでいる.通信分野においては,第5世代移動通信システム(5G)等による多様なサービスの効率的な収容や,複雑化するネットワークの自動化や最適化のために,機械学習を適用する検討が進んでいる.本小特集では,通信ネットワークを構成する様々なシステムにおいて,機械学習を活用することによりネットワークの運用を高度化する研究開発事例を,第一線で御活躍中の方々から御説明頂く.

 第1章では,KDDI総合研究所の河崎氏らに,5Gコア網における機械学習を用いた障害原因解析手法について解説頂く.ネットワーク仮想化技術は,迅速かつ柔軟な通信サービスの提供を可能とするが,ネットワーク構成を複雑化し,障害発生時には原因追究を長期化させ,従来の人手中心のオペレーションによる通信品質の維持を困難とする.このような課題に対し,機械学習をネットワーク監視に適用する取組みとして,仮想化された5Gモバイルコア網における障害原因解析モデルの構築手法,得られた解析モデルの性能比較評価結果について紹介頂く.

 第2章では,NTTドコモの鈴木氏らに,モバイルネットワークにおけるAIを用いたオペレーション高度化技術について解説頂く.5Gではスライシング技術等の導入でネットワーク構成が複雑化し,オペレーション業務が多様化され,人手による対応が困難となる.このような課題に対し,ネットワーク運用自動化の取組みとして,人手を要さないオペレーションを可能とするゼロタッチオペレーション構想とその実現に向けた各標準化団体における活動,AI技術を用いたオペレーション高度化の概要と適用事例を紹介頂く.

 第3章では,NECの黒田氏らに,機械学習を用いたネットワークの自動設計技術について解説頂く.様々な産業におけるDX(Digital Transformation)の推進にネットワークの活用は必須となっており,異なる要件のネットワークを柔軟かつ迅速に構築する必要がある.更に,運用中にも変化する最適なネットワーク構成に対して,あらゆるシナリオを想定した資源や機材の利用パターンを人出で用意することは困難である.このような課題に対し,ネットワーク設計自動化の観点で,自動設計技術の概要,機械学習による高速かつ高品質な設計を可能とする知識獲得手法,サンプル実験による手法の有効性評価結果を紹介頂く.

 第4章では,NTTの川口氏らに,不正侵入検知及び防御システム(IDPS: Intrusion Detection and Prevention System)における機械学習を用いたシグネチャ分類の自動化技術について解説頂く.IDPSでは,異常通信に特徴的なパターンであるシグネチャとそれにマッチした通信に対するアクションを設定する必要がある.日々新たな脅威が発生する中,シグネチャの適切な設定には,セキュリティ技術者の専門性に加えて,時間も必要となり,ネットワーク運用コストの増加につながる.このような課題に対し,設定を自動的に分類するための取組みとして,機械学習を適用したシグネチャの特徴量設計とその分析,分類精度の実験結果について紹介頂く.

 本小特集を通して,多くの方に機械学習を用いたネットワーク運用技術に関する関心をお持ち頂き,当分野の研究開発の進展の一助となれれば幸いである.

 最後に,御多忙の中,御執筆頂きました著者の皆様,御支援,御協力を賜りました小特集編集チームの皆様,事務局ほか関係各位に感謝申し上げます.

小特集編集チーム

 田中 和樹  服部 恭太  大辻󠄀 太一  澤田 政宏 


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