小特集 1. 機械学習を用いた仮想5Gコア網における障害原因解析手法

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Vol.105 No.10 (2022/10) 目次へ

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機械学習を活用したネットワーク監視・予測・制御技術の最新動向

小特集 1.

機械学習を用いた仮想5Gコア網における障害原因解析手法

Root Cause Analysis in Virtualized 5GC Using Machine Learning

河崎純一 毛利元一 鈴木悠祐 大谷朋広

河崎純一 正員 (株)KDDI総合研究所オペレーショングループ

毛利元一 KDDI株式会社情報セキュリティ本部

鈴木悠祐 KDDI株式会社オペレーション技術開発部

大谷朋広 正員:シニア会員 KDDI株式会社技術戦略本部

Junichi KAWASAKI, Member (Operation Group, KDDI Research Inc., Fujimino-shi, 356-8502 Japan), Genichi MOURI, Nonmember (Information Security Department, KDDI Corporation, Tokyo, 163-8003 Japan), Yusuke SUZUKI, Nonmember (Operetion Technology Development Department, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan), and Tomohiro OTANI, Senior Member (Technology Strategy Department, KDDI Corporation, Tokyo, 102-8460 Japan).

電子情報通信学会誌 Vol.105 No.10 pp.1194-1200 2022年10月

©電子情報通信学会2022

Abstract

 昨今普及が進む第5世代移動通信システム(5G)のネットワークでは,仮想化技術を用いたNFV(Network Function Virtualization)の導入が拡大している.通信事業者は,仮想化によって迅速かつ柔軟に通信サービスを提供することができるようになる一方で,ネットワーク構成の複雑化により運用負荷が増大し,従来の人手中心のオペレーションでは通信品質を維持するのが難しくなる.本稿では,その解決策として期待される機械学習を用いたネットワーク運用の中から特に障害原因解析に関する取組みとして,仮想5Gコア網を対象とした機械学習による障害原因解析モデルの構築手法と性能評価の結果について述べる.

キーワード:機械学習,ネットワーク監視,障害原因解析,5G

1.は じ め に

 近年普及が進んでいる第5世代移動通信システム(5G)のネットワークでは,仮想化技術によるNFV(Network Function Virtualization)(1)の商用展開が本格化し,サーバリソースの効率的かつ柔軟な利用を可能にする仮想マシンを用いたVNF(Virtual Network Function)や,OSの共用により更なるリソースの効率利用や高速起動を実現するコンテナを用いたCNF(Cloud-native Network Function)の導入が拡大している.通信事業者は,仮想化によって従来と比べ迅速かつ柔軟に通信サービスを提供することができるようになる.例えばネットワークスライスでは,大容量や低遅延といったアプリケーションの特性に応じた通信要件を満たすネットワークを,ネットワークスライスと呼ばれる単位で構築し,提供することが可能となる.一方で,仮想化によりネットワークの構成要素が増大しかつ構成が複雑化するため,運用面では負荷が増大すると考えられる.例えば,仮想化基盤を構成するあるハードウェアモジュールが故障した場合,その基盤上に構築された複数のNF(Network Function)が影響を受けて多数のアラームを検知するため,障害の原因を見つけ出すのに長時間を要してしまう.このため,仮想ネットワークにおいて従来のように人手中心のオペレーションでは通信品質を維持するのが困難になる.

 そこで,AI(Artificial Intelligence)/機械学習をネットワーク運用に活用する取組みが注目されている.ネットワーク運用は設計業務,監視業務,復旧業務等から構成され,それぞれの業務に対して最適なAIの活用方法が検討されているが(2)(4),本稿では監視業務における機械学習を使った取組みについて述べる.監視では,障害を検知するためや障害の根本原因を特定するために,従来は人がしきい値や切り分け手順といったルールを定め,これに従って対応してきた.5Gではこれまで以上にきめ細かい通信要件に対する運用が求められるため,監視ルールの設定及び維持管理は大きな負担となる.そこで,機械学習を利用することによって,人手によるルール作成の必要性が減るため負荷軽減が期待される.また,人では判断できない,すなわち人手によるルール作成が難しい複雑な大規模障害に対して,機械学習を用いることによって,早期に故障箇所を発見することで影響を最小限にとどめることも期待できる.


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