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解説
リベラルアーツ大学における情報科学教育
Information Science Education in Liberal Arts College
A bstract
クリティカルシンキングを重視し,分野を横断した総合知の修得を目指すリベラルアーツ教育は,グローバルな課題解決のための知的インフラを構築する意味からも,高等教育のシステムとして重要性を増しているが,同時に,大学には,昨今のジョブ型雇用を見据えて,高い専門性を持つ専門家人材育成へのニーズもある.限られた大学教育の時間の中でこれらを両立させることはできるのか.本稿ではリベラルアーツ教育と専門化育成教育の両立について考察する.
キーワード:リベラルアーツ,情報科学教育,高等教育改革,一般教育科目
私がフランス文学の教員として国際基督教大学(ICU)に着任したのは,26年ほど前のことだ.数年前,研究室の片付けをしていたら,往復葉書がでてきた.そこには,「今学期の空いている時間帯を記して返信してください」と書いてあった.みんなで集まって行う卒論ゼミの曜日と時間を決めるために,ゼミ生たちへ往復葉書を出してスケジュール調整をしていたらしい.自分でもすっかり忘れていて驚いた.今ならアプリとメールで簡単に済ませてしまえる作業である.思い返してみれば,当時は研究室にパソコンが支給されていて,私は初めてマックのパソコンで仕事をすることを覚え始めたところだった.事務から,資料をダウンロードして下さい,と言われて,その用語の意味が分からなかった,そんなレベルであった.学生も,パソコンを使っている者はまだ多くはなかった.
着任前は東京大学の仏文科で助手をしていた.そのときの文学部長は仏文科の田村毅教授だったが,田村教授の口には,当時,総合研究博物館教授で情報科学の教授を併任されていた坂村健教授の名前がしばしば上るのだった.坂村教授とかなり突っ込んだ情報科学の話をされていたようだ.文学部にも,文献のデータベースを作成するといった情報科学的なアプローチが採り入れられ始めていた.ダイヤル回線とモデムを使ってパソコン通信を始める院生も何人かいた.
私は今も情報科学の知識は皆無に等しいが,日常使用のディジタル機器は慣れに任せていろいろと使っている.電気の仕組みなど何も知らないのにスイッチを押してランプをともすのと似たようなものである.
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