小特集 システム数理の現状と展望 小特集編集にあたって

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Vol.105 No.2 (2022/2) 目次へ

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小特集

システム数理の現状と展望

小特集編集にあたって

編集チームリーダー 山口真悟

 最近,数理・データサイエンス・AIのトリオを見かけることが多くなった.これは内閣府・文部科学省・経済産業省の3府省が推進する教育プログラム認定制度の名称に組み込まれているからである.名は体を表すように,数理・データサイエンス・AIは一体となって,真の力を発揮する.システム数理は,これらを広くカバーする理論体系であるが,その広範性及び先進性ゆえ全貌を把握することが難しかった.このような背景から,本小特集では理論体系の幹を成すトピックを厳選し,専門家以外にも全体像を把握頂けるよう分かりやすく紹介することとした.

 まず第1章では,大阪大学の宮本氏にシステム数理が取り扱うシステムの分類について整理して頂いた後,離散事象システム・並行システムのモデル化言語の一つであるペトリネットについて解説頂いた.基本的なペトリネットに加え,拡張ペトリネットや近年の新しい応用事例,ツールが幅広く紹介されており,ペトリネットになじみのない方はもちろん,御存じの方もその魅力を再発見して頂けるだろう.

 第2章では,名古屋大学の東氏と北海道大学の小林氏に離散値信号と連続値信号が混在した動的システムであるハイブリッドシステムについて解説頂いた.近年,IoTやAI,そしてサイバーフィジカルシステムの重要性が高まっており,ハイブリッドシステムに関する理論は,それらを実現する基盤として,ますます重要性を増している.ハイブリッドシステムの数理モデルと制御に加え,今後期待される応用分野についても論じて頂いた.

 第3章では,大阪大学の高井氏に与えられた仕様を満たすように離散事象システムを制御するスーパバイザ制御について解説頂いた.例えば,交差点において無人搬送車同士の衝突を回避するスーパバイザは,ある搬送車が交差点に進入してから退出するまで,他の搬送車が交差点に進入することを禁止する.簡単な例に対して実際にスーパバイザを組み立てながら,その理論を分かりやすく御説明頂いた.

 第4章では,東芝エネルギーシステムズの豊嶋氏,あずさ監査法人の新出谷氏,プロセスマイニング・イニシアティブの松尾氏にプロセスマイニングについて解説頂いた.プロセスマイニングはシステムのログデータから業務プロセスの実態をペトリネットなどの数理モデルとして把握し,それをプロセスの革新に活用する技術の総称である.DX推進の切り札の一つと目されている.限られた誌面の中で,理論的な背景から実用化の動向までを包括的に御説明頂いた.

 第5章では,電気通信大学の庄野氏にディープラーニングについて解説頂いた.畳込みニューラルネットワークとその基本構成単位であるビルディングブロックの変遷と発展について,その誕生から現在に至る経緯,そして未来への展望を御説明頂いた.

 第6章では,北九州市立大学の永原氏に機械学習や信号処理の分野で近年盛んに研究されているスパースモデリングについて,その基礎と動的システムへの応用について解説頂いた.回帰問題を題材として,正則化の観点からスパースモデリングの基礎を説明頂き,動的システムへの応用としてスパースなインパルス応答の推定にスパースモデリングが利用できることを紹介頂いた.コードも紹介されているので,是非動かして理解を深めてほしい.

 本小特集が数理・データサイエンス・AIに関心のある人々にとって,それらをつなぐシステム数理を学ぶきっかけとなれば幸いである.

 末尾ながら,御多忙の中執筆を御快諾頂いた著者の皆様に厚く御礼申し上げます.また多数の御支援を頂いた小特集編集チーム,事務局の皆様に感謝致します.更に本小特集の企画実現に御支援頂きましたシステム数理と応用研究専門委員会の皆様に深く感謝致します.

小特集編集チーム

 山口 真悟  澤畠 康仁  田中  剛  中野 允裕  宮田 孝富  八巻 俊輔  山脇 大造  米澤 和也 


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